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理想主義のファン・ハールにプライドを捨てさせた名門復権への誇り
プライドを捨てた男に残った誇り
そして今年、マンUを再建するためにやってきた。再び己の目指すサッカーで頂点を目指す。そう意気込み、オールド・トラッフォードに足を踏み入れた。しかし、現実は甘くはなかった。プレミアリーグは、想定していたレベルのはるか上にあったのだろう。周囲からの期待の歓声は、瞬く間に非難の怒号へと変わった。さらに、ここにきて負傷者が相次ぐ不運に見舞われ、文字通り絶体絶命の立場に身を置くこととなった。
そして、背水の陣で選んだ切り札は、あの時の3-4-1-2システムであった。
アーセナル相手に前半30分までは圧倒的に押し込まれ続けた。デ・ヘアのセーブに幾度となく救われ、何とか耐えしのいだ。ただし、そこから相手に疲労の色が見え始めると、携えていたカウンターという名の武器で2得点を挙げ、結果として勝ち点3を持ち帰った。暫定ながらトップ4に食い込むことにも成功している。
決して魅力的なサッカーではなかった。それを誰よりも感じているのは、ファン・ハール自身なのかもしれない。だが、チームは勝ったのだ。
ファン・ハールは現実主義を選択した理想主義者である。彼には、勝利のため、そのプライドを手放す強さが備わっていた。しかし、決して誇りを捨てたわけではない。
ファン・ハールはチームを欧州の舞台に連れ戻すため、来週末もピッチの脇に置かれたベンチに腰を掛ける。名門復活を任された男としての誇りをその拳に握りしめて。それは、自らの哲学よりも重い“モノ”だったのかもしれない。
【了】
サッカーマガジンゾーンウェブ編集部●文 text by Soccer Magazine ZONE web
ゲッティイメージズ●写真 photo by Getty Images
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