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理想主義のファン・ハールにプライドを捨てさせた名門復権への誇り
鮮烈な夏の記憶
アイデアリズム(理想主義)でありながら、リアリズム(現実主義)の道を突き進む。それは決して容易な選択ではない。ただし、プライドを捨て去る決断を下したとき、哲学者は強さを手に入れる。
マンチェスター・ユナイテッド(マンU)は22日、プレミアリーグ第12節でアーセナルと対戦し、敵地で2-0と貴重な勝ち点3を奪った。
マンUは、多くの負傷者を抱え、危機的な状況を迎えていた。しかし、大一番を前に、MFアンヘル・ディ・マリア、DFルーク・ショー、GKダビド・デ・ヘアが土壇場で戦線に復帰を果たした。
ルイス・ファン・ハール監督は、この試合で選手たちを3-4-1-2システムでピッチに送り出した。マンU就任時、理想とする「攻撃的」な3バックシステムでのチームづくりを掲げていた。そのオランダ人指揮官は、プレミアという世界最高の激しさを備えたステージを前に、4バックシステムにシフトせざるを得なかった。だが、センターバックに故障者が続出。皮肉にも他に選択肢を持たない状態で、「守備的」な3バックシステムを採用することになった。
この守備的な3-4-1-2には成功事例がある。今夏に開催されたブラジルワールドカップで世界に鮮烈な印象を残している。ファン・ハールが率いたオランダ代表は1次リーグ第1戦で前回王者スペインと対戦し、5-1の歴史的大勝を収めた。その際、採用したのが、このシステムである。
ファン・ハールの中に流れる哲学は本来、ウイングを配したトータルフットボールだ。「ボールに仕事をさせよう」。それが彼の口癖であった。しかし、4年前の南アフリカW杯の決勝戦では、自身の目指す頂点のその先を行くサッカーを披露した無敵艦隊に屈した。その瞬間から、ファン・ハールの中で何かが変わった。自身が目指したい道か、チームが目指すべき道か。オランダの名将は、岐路に立たされた。そして、選んだ道が、あの大勝劇に集約されていた。ファン・ハール監督は、誇りを捨てることを選んだのだ。