三笘の“誤審認定”、プレミアの対応法が現代の理想? 元主審・家本氏が見解「全部に声明を出す必要はないが…」

三笘薫への判定は誤審と認定【写真:Getty Images】
三笘薫への判定は誤審と認定【写真:Getty Images】

【専門家の目|家本政明】三笘への判定に家本氏も見解、プレミア審判の統括組織の動きにも注目

 イングランド1部ブライトンの日本代表MF三笘薫は、現地時間4月8日に行われたプレミアリーグ第30節のトッテナム戦(1-2)にフル出場。後半、ペナルティーエリア内で三笘が倒された場面の判定はノーファウルとなったが、審判の統括組織が“誤審”と認定。元国際審判員・プロフェッショナルレフェリーの家本政明氏は統括組織のスムーズな行動を称賛している。(取材・構成=FOOTBALL ZONE編集部・金子拳也)

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 トッテナム戦で左サイドハーフとして出場した三笘は、前半17分に味方の浮き玉のパスを受け正確なボールコントロールからボレーシュートをゴールへ蹴り込んだ。しかしビデオ・アシスタント・レフェリー(VAR)介入の末、トラップの際にハンドがあったとしてノーゴールとなっている。

 このシーンに関して家本氏は「どちらとも言える」と判定のグレーゾーンであると指摘。「まったく当たっていないということはあのアングルのみでは立証できない。より正確さを求めるのだったら、物理や統計の専門家を雇って解析してもらい、何%どこに当たっているのかを出してもらうなど、それくらいやらないと納得感は出ない」と持論を述べた。

 ほかにもいくつか話題を呼ぶ判定があったこの試合で、特に注目を集めたのが後半26分のシーンだ。三笘が相手のペナルティーエリア内でMFピエール・エミール・ホイビュルクに足を踏まれて転倒。主審の笛は吹かれず、ファウルなしでプレー続行となっている。

 後日、PGMOL(Professional Game Match Officials Limited/イングランドにおける審判員の統括組織)がこの判定を“誤審”と認定。ブライトンにペナルティーキック(PK)が与えられるべきだったという声明を公式で発表した。

 この見解に対し、家本氏も「公式見解を見て、『それはそうだよね』という感じです」と、PKとなるべきだった事象への見解に同調。該当シーンを確認して、「最初、なぜPKではないのか理解できませんでした。意図的に踏んだわけではないですが、確実に三笘選手の足を踏んでいます」とノーファウル判定だったことに衝撃を受けたという。

「現場のレフェリーが判別しにくかったというのは100歩譲っていいとしても、VARは何しているんだという印象でした。ちゃんと仕事してと思って見ていました」

 そう判定について述べたうえで、「余談ですが、最近のプレミア(の審判組織)はレフェリーのミスに対して見解を早めに世に出します。これは今の時代に合っていて個人的に良いと思います」と家本氏はPGMOLの対応に感嘆した。

「全部の判定に対し声明を出す必要はないですが、世間を賑わす大きな事象に関しては情報を隠すより『これはこうだった』と組織としてできるだけ早く発信していくのは良いことだと思います。声明を出すことでレフェリーを守ることにつながるからです。

 情報のオープン化は大事。人間だからどうしても間違い、勘違い、迷いはありますが、そのあとに統括組織がどう対応するのか。レフェリーに対して、また外部に対しての説明責任を示す部分は組織としてもすごく大切なことだと思います」

 国際審判として世界の舞台を経験してきた家本氏。レフェリーを守るためにも、プレミアリーグのような対応は現代の理想の形だと捉えているようだ。

家本政明

いえもと・まさあき/1973年生まれ、広島県出身。同志社大学卒業後の96年にJリーグの京都パープルサンガ(現京都)に入社し、運営業務にも携わり、1級審判員を取得。2002年からJ2、04年からJ1で主審を務め、05年から日本サッカー協会のスペシャルレフェリー(現プロフェッショナルレフェリー)となった。10年に日本人初の英国ウェンブリー・スタジアムで試合を担当。J1通算338試合、J2通算176試合、J3通算2試合、リーグカップ通算62試合を担当。主審として国際試合100試合以上、Jリーグは歴代最多の516試合を担当。21年12月4日に行われたJ1第38節の横浜FM対川崎戦で勇退し、現在サッカーの魅力向上のため幅広く活動を行っている。

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