元国際主審・家本氏、日本代表DFの“負けん気”に注目 警告後も激しく守備…「闘争心むき出しだった」

激しいマッチアップを見せた菅原(左)とドゥラン【写真:Getty Images】
激しいマッチアップを見せた菅原(左)とドゥラン【写真:Getty Images】

【専門家の目|家本政明】右SBでフル出場した菅原と、コロンビア代表19歳FWドゥランのマッチアップに注目

 森保一監督率いる日本代表は3月28日、キリンチャレンジカップ2023でコロンビア代表と戦い1-2で敗れた。この試合で右サイドバック(SB)としてプレーしたDF菅原由勢(AZアルクマール)とコロンビア代表の19歳FWジョン・ハデル・ドゥラン(アストン・ビラ)のマッチアップシーンを、元国際審判員・プロフェッショナルレフェリーの家本政明氏が振り返っている。(取材・構成=FOOTBALL ZONE編集部・金子拳也)

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 24日のウルグアイ戦(1-1)でもフル出場し、安定した守備を見せていた菅原。コロンビア戦で2試合連続スタメンとなった菅原の前に立ちはだかったのが、前半33分に同点弾を決めた、イングランド1部プレミアリーグのアストン・ビラで活躍する期待の19歳FWドゥランだった。

 その最たる注目シーンは、自陣でのコロンビア側が行ったスローインの場面だ。前半30分に1枚イエローカードをもらっていた菅原だったが、ポジション取りでドゥランと激しい掴み合いに。白熱した試合を表す1つのシーンだった。

 過剰に激しくいってしまえばもう1枚カードが出てしまう可能性もあったが、このプレーについて家本氏は「個人的には、なんとも思わなかった。『負けるな』と応援していた」と持論を述べている。

「フェアプレーはフットボールだけでなく、スポーツをする上でとても大事な要素だが、だからといっておとなしくプレーしていては世界で勝つことはできない。フットボールはある種の荒々しさが必要な競技。欧州も南米もそうした激しさや闘争心を大切にしている。この場面の菅原選手は“やられたらやられっぱなし”というのがなく、闘争心むき出しだった」

 そう話したうえで、警告を1枚もらっていた状況については「本人も注意しなければならないし、周りの選手やキャプテンも諭すように、興奮しすぎないようにすることが大事」と審判目線の見解を示す。「だからと言って引きすぎたり躊躇してしまうと相手にやられてしまう。そのあたりのさじ加減が難しい」と戦い方にも注意が必要だと説いた。

 また国際試合で戦ううえで、家本氏は菅原が体験したような場面で「まずはメンタルで負けないことが大事」と話す。「メンタル、フィジカル、テクニカルのトライアングルが大事。なかでも気持ちの部分で負けてしまうと、ほか(フィジカルやテクニカル)の部分で相手の後手に回ってしまう。そこにプラスして、ずる賢さや駆け引きといった思考力や判断力も要素として入ってくる」と指摘した。

 家本氏は今回対戦したウルグアイ、コロンビアのような南米チームは特に「ずる賢さやしたたかさの能力が高い」と印象を語る。「教育や社会、考え方や価値観の違いが関係していると思う。日本とはまた違った考え方が存在する。日本は組織、連動が優位性を持っているので、その部分の精度を高めることも重要」と持論を展開していた。

 試合終盤には、後半途中でピッチに立ったMF久保建英(レアル・ソシエダ)がファウルを受け激高する瞬間もあったが、そうした“メンタルの強さ”を持った選手が日本代表にも増えてきているのかもしれない。

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家本政明

いえもと・まさあき/1973年生まれ、広島県出身。同志社大学卒業後の96年にJリーグの京都パープルサンガ(現京都)に入社し、運営業務にも携わり、1級審判員を取得。2002年からJ2、04年からJ1で主審を務め、05年から日本サッカー協会のスペシャルレフェリー(現プロフェッショナルレフェリー)となった。10年に日本人初の英国ウェンブリー・スタジアムで試合を担当。J1通算338試合、J2通算176試合、J3通算2試合、リーグカップ通算62試合を担当。主審として国際試合100試合以上、Jリーグは歴代最多の516試合を担当。21年12月4日に行われたJ1第38節の横浜FM対川崎戦で勇退し、現在サッカーの魅力向上のため幅広く活動を行っている。

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