新生・日本代表に“ハマりそう”な「未招集の5人」 W杯&3月シリーズ選外から厳選…森保ジャパン進化のキーマンは?

左から渡辺皓太、旗手怜央、林 大地【写真:Getty Images & Reuters】
左から渡辺皓太、旗手怜央、林 大地【写真:Getty Images & Reuters】

【識者コラム】第2次森保Jの基準を踏まえ、カタールW杯&3月シリーズで招集外の選手から厳選

 森保一監督が率いる日本代表はカタール・ワールドカップ(W杯)後の最初のシリーズを終えた。結果は南米の強豪ウルグアイ、コロンビアを相手に1分1敗。期待値を考えてもとても満足できる内容と結果ではないが、3年半後の北中米W杯に向けて、ビルドアップの設計をはっきりさせて、より再現性のある戦いをしていこうという方向性は見られた。そうした基準も踏まえて、個人能力や実績に捉われず“新生・日本代表”でハマりそうな5人をカタールW杯の本大会と今回のシリーズで招集されなかった選手から厳選した。

■渡辺皓太(MF/横浜F・マリノス)

 最終ラインからボールを引き出して、中盤で動かす技術と視野において、彼ほど現在の森保ジャパンにフィットするタレントはあまり浮かばない。ポジション的には2ボランチの一角だが、うまくボールが回れば前に出て決定機にも関われる。同じ横浜FMの西村拓真のような選手がトップ下の場合はより前向きにプレーさせることができるだろう。

 東京五輪世代の活動でもしばしば招集されており、2019年のコパ・アメリカ参戦時のA代表(東京五輪世代中心で構成)にも選ばれているが、その当時からは段違いにスケールアップしており、方向性からもリストアップには入っているはず。ただ、周知のとおり欧州組が充実しているポジションで、ここから元同僚の岩田智輝(セルティック)などが候補になってくることを想定しても、なかなか壁を破るのは難しいだろう。それでも戦力化できれば森保ジャパンを進化させる効果は大きい。

■中村帆高(DF/FC東京)

 新生森保ジャパンの右サイドバックにはウルグアイ戦、コロンビア戦と2試合続けて菅原由勢(AZアルクマール)が担ったが、酒井宏樹(浦和レッズ)の後継者として主力の座を掴んだとは言い難く多くの選手にチャンスがある。中村は1対1の守備に強く、鋭い攻め上がりからのクロスに加えて、FC東京でビルドアップに関われる右サイドバックとしての礎石を築いている。左サイドで同僚のバングーナガンデ佳史扶がA代表デビューを果たしたが、能力面では中村にも十分チャンスはありそうだ。

 右サイドのアタッカーは伊東純也(スタッド・ランス)と堂安律(フライブルク)という全く特長の異なる2人が担うだけに、90分間出ることを考えると、選手の組み合わせや試合展開に柔軟な攻撃参加やサポートが大事になってくる。そうした基準で考えてもポテンシャルは十分だが、橋岡大樹(シント=トロイデン)なども含めた現メンバーを超えていくにはもっと攻撃面での存在感が必要だ。横浜FC戦で仲川輝人からのスルーパスに抜け出し、ディエゴ・オリヴェイエラのゴールをアシストしたようなシーンはもっと出したい。

攻撃のクオリティーを変え得る旗手、縦に迫力を生み出せる川辺も実力十分

■川辺 駿(MF/グラスホッパー)

 ウルグアイ戦とコロンビア戦は森保監督が求めるビルドアップという視点では見どころも多かったが、手段が目的化してしまい、ゴールを目指す矢印が弱まったことも事実だ。守田英正(スポルティング)、遠藤航(シュツットガルト)、鎌田大地(フランクフルト)といった中盤の選手たちも、次のシリーズではベクトルを前に向けてくれるはずだが、ビルドアップをベースにしながら縦に迫力を出せる“ボックス・トゥ・ボックス”のMFが不足している。川辺はゲームメイカーとして長短のパスで組み立てながら、機を見てバイタルエリアまで飛び出してミドルシュートを打ち込むこともできる。

 スイスリーグで8ゴール5アシストを記録しており、中盤をオーガナイズしながら多くの決定的なシーンに絡めるスペシャリティーは大きな魅力だ。ブンデスリーガで揉まれている鎌田や遠藤に比べると、スイスはインテンシティーやテンポという基準で下がってしまうが、すでに契約を結んでいるプレミアリーグのウォルバーハンプトンにステップアップすることが、そのまま代表につながる可能性は高そうだ。

■旗手怜央(MF/セルティック)

 3月シリーズでの2試合では招集されなかったが、カタールW杯までのサイクルよりもフィットする可能性は高いと見ている。世界との戦いはもちろん大事だが、ここから日本代表は来年1月のアジアカップに向けて、日本のストロングを消してくる相手や引いた相手をどう崩すかという課題に向き合うことになる。プレッシャーを回避するビルドアップだけでなく、全体を押し上げてから崩していくことを考えると、中盤から前目にアクションをかけていける選手の存在が重要になってくる。

 そう考えた時に、ボールをつなぐことと仕掛けからゴールを狙うこと、その両面で最もクオリティーを出せるタレントの1人は旗手だろう。ライン間で受け手になることもできれば、比較的狭いエリアでボールを受けて、決定的なシーンに持ち込むこともできる。どちらかと言えば、ウルグアイ戦とコロンビア戦で出せなかった部分で輝ける選手であり、いかに自分たちからアクションを起こして攻め切るかというところで大きな力になり得る。

 当然、日本のエース格になりつつある三笘薫(ブライトン)との関係という意味でも、組み込めればプラス材料になるだろう。リーグの環境といった問題も取り沙汰されるが、もし強度の高いリーグでコンスタントに出るようなことになれば当然アドバンテージになるだろう。

■林 大地(FW/シント=トロイデン)

 ウルグアイ戦、コロンビア戦では後方からのビルドアップにフォーカスしたが、森保監督はそこに固執するわけではなく、カタールW杯で課題が出たところをベースアップするためのプロセスであることを強調している。次のシリーズでは対戦相手にもよるが、縦にボールを付けてスピードアップさせるような攻撃の度合いは強まるはず。そうなった時に、幅広くポストプレーができて、迫力あるフィニッシュにつなげられる選手の存在が重要になる。

 林は178センチでサイズこそ上田綺世(セルクル・ブリュージュ)や町野修斗(湘南ベルマーレ)ほど大きくないが、しっかりとボールを収めて周りの選手を前向きにする能力は3月シリーズに招集されたFW陣の誰よりも高い。フィニッシュに関してもシント=トロイデンで試合に出られない時期もあったなかで7得点を記録している。絶対的な存在が見当たらないFWというポジションだけに、上田や町野に負けないアピールをしていきたい。

国内には第2の伊東”になり得るタレントも

U-22代表でもプレーする鹿島の松村優太【写真:Getty Images】
U-22代表でもプレーする鹿島の松村優太【写真:Getty Images】

 そのほか、岩田(セルティック)はボランチとしてビルドアップの軸になれることに加え、セルティックでは相手陣内の攻撃参加にも取り組んでおり、ここから評価を高めていくか興味深い。またサイドバックへの攻撃の関わり方を考えると、元々の本職だった同ポジションでも改めて可能性を見てみたい。

 右のサイドアタッカーは伊東と堂安がほぼ固定化していきそうだが、個人で違いを生み出せる新手のアタッカーが台頭してくると面白い。楽しみな若手は何人もいるが、U-22代表にも選ばれた松村優太(鹿島アントラーズ)はスピードの絶対値が高いうえに、攻撃ビジョンにも磨きをかけており、本人もモデルとする“第2の伊東”になり得るタレントだ。

 MLS(アメリカ・メジャーリーグサッカー)でデビューした守護神の高丘陽平(バンクーバー・ホワイトキャップス)も後方からのビルドアップ面やハイラインのカバーなど、日本が目指す戦い方を進化させるには適任で、守護神の座を掴んでいければ東京五輪世代やパリ五輪世代の若手を押し退けて、シュミット・ダニエル(シント=トロイデン)の強力なライバルにもなり得る。

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河治良幸

かわじ・よしゆき/東京都出身。「エル・ゴラッソ」創刊に携わり、日本代表を担当。著書は「サッカーの見方が180度変わる データ進化論」(ソル・メディア)など。NHK「ミラクルボディー」の「スペイン代表 世界最強の“天才脳”」を監修。タグマのウェブマガジン「サッカーの羅針盤」を運営。国内外で取材を続けながら、プレー分析を軸にサッカーの潮流を見守る。

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