久保建英の“勇敢な睨み合い” 一触即発シーンに元主審・家本氏が言及「選手は絶対に感情的になる」
【専門家の目|家本政明】試合終盤に勢いあるドリブルをファウルで止められ激高、一触即発の場面に見解
森保一監督率いる日本代表は、3月28日にコロンビア代表と対戦し1-2で敗れた。後半途中から出場したMF久保建英(レアル・ソシエダ)は果敢にドリブルを仕掛け、相手にイエローカードを誘発する場面も。元国際審判員・プロフェッショナルレフェリーの家本政明氏は、久保が受けたファウルから見たエモーショナルな部分に見解を示している。(取材・構成=FOOTBALL ZONE編集部・金子拳也)
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24日のウルグアイ戦で1-1と引き分けた森保ジャパン。カタール・ワールドカップ(W杯)後、初の代表戦で勝利を目指したコロンビア戦は日本代表MF三笘薫(ブライトン)のゴールで幸先よく先制する。
しかし、前半33分にボールロストからコロンビア代表FWジョン・ハデル・ドゥランに決められ同点に。エンド変わった後半19分には、FWラファエル・サントス・ボレに強烈なバイシクル弾を許し1-2で逆転負けを喫した。
ウルグアイ戦をコンディションの影響から欠場した久保は、コロンビア戦の後半14分にFW西村拓真(横浜F・マリノス)と代わってピッチへ。前線でリズムを変え、ペナルティーエリア内への攻撃回数を徐々に増やしていった。
そんな久保の見せ場の1つとなったのが、逆転され迎えた後半アディショナルタイムのドリブルシーン。センターライン付近で相手を1人かわし加速すると、FWディエゴ・バロジェスに倒される。久保が倒したバロジェスに“ガンを飛ばす”荒れ模様になった。
ムハンマド・タキー・アルジャアファリー・ビン・ジャハリ主審はバロジェスに対しイエローカードを提示。このファウルに対し家本氏は「スパイクの裏で向かうとか、うしろからふくらはぎを蹴ったとかではないので、危険度は中程度」と指摘し、「うしろから迫って久保の前に足を出した。ただし、後方から追いかけて“削って”いるのでファウルの質としてはとても悪い。イエローカードは妥当」と判定について見解を示した。
そのうえで「ドリブルでスピードを上げ前進し、アタッキングサードに入り『さあいくぞ』という時にあのファウルをやられると選手は絶対に感情的になると思う。久保選手の反応も『そうなるよね』といった感じ」と怒りを露わにした久保の心情を推測している。
「久保選手はとてもクレバーな選手なので、自制心を失うくらい怒ったのかというと、そうではないと思う。冷静さを保ちながら、怒りを表現したのではないか」
家本氏は、久保が理性を失うことなく“闘志”を表した場面だと感じたという。「スペインはラテン系。ドイツやほかの欧州の国などとは価値観がまた違う。素直な感情表現で僕は好き」と個人的に受けた印象を話してくれた。
「久保選手がずっと国内にいたら、あのタイミングでああいう表現(怒りの表現)はしない可能性が高い」と、幼少期を過ごした国柄の影響を指摘した家本氏。頼もしい背中を見せた21歳の若武者を、楽しんで眺めていたようだ。
家本政明
いえもと・まさあき/1973年生まれ、広島県出身。同志社大学卒業後の96年にJリーグの京都パープルサンガ(現京都)に入社し、運営業務にも携わり、1級審判員を取得。2002年からJ2、04年からJ1で主審を務め、05年から日本サッカー協会のスペシャルレフェリー(現プロフェッショナルレフェリー)となった。10年に日本人初の英国ウェンブリー・スタジアムで試合を担当。J1通算338試合、J2通算176試合、J3通算2試合、リーグカップ通算62試合を担当。主審として国際試合100試合以上、Jリーグは歴代最多の516試合を担当。21年12月4日に行われたJ1第38節の横浜FM対川崎戦で勇退し、現在サッカーの魅力向上のため幅広く活動を行っている。