日本代表DFへイエローカードが出されるべきだった? ピンチ回避のタックルに元主審・家本氏が見解「警告ですね」
【専門家の目|家本政明】ノーファウル判定となった日本代表DF瀬古のスライディングタックルを考察
森保一監督率いる日本代表は3月24日、キリンチャレンジカップ2023でウルグアイ代表と対戦し1-1で引き分けた。前半、日本代表DF瀬古歩夢(グラスホッパー)がピンチの局面で際どいスライディングタックルを敢行。ノーファウルだったジャッジが話題となったなかで、この判定に元国際審判員・プロフェッショナルレフェリーの家本政明氏が見解を示している。(取材・構成=FOOTBALL ZONE編集部・金子拳也)
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問題のシーンは前半26分、MF守田英正(スポルティング)が敵陣でパスミスからボールを奪われ、カウンターを受けた日本。ウルグアイのMFファクンド・ペリストリが持ち上がろうとしたところを瀬古がスライディングタックルでブロックした。
ペリストリが倒れたが韓国のコ・ヒョンジ主審は笛を鳴らさず、プレー続行となっている。リプレイ映像で見返すと、ボールへタックルを仕掛けた瀬古の右足は相手と接触していないが、逆足が相手の足をトリップしているようにも見えた。
家本氏は「警告ですね。SPA(通称スパ/StoppingaPromisingAttack/大きなチャンスの阻止)だと思う」と指摘し「ボールにチャレンジしたそのあとに、反対の足でトリップする形になった。相手をトリップする意図は瀬古選手にはなかったと思うが、結果的に相手の足を引っかけてしまっている」と考察している。
では、なぜファウルを見逃してしまったのか。家本氏は「韓国のレフェリーからすると、ウルグアイの選手が日本の選手に対して突っ込んだように見えたのではないか」と推測。「ウルグアイの選手が起こした接触」と判断したことが今回の判定の流れにつながったと持論を述べた。
また、瀬古の一連のタックルにビデオ・アシスタント・レフェリー(VAR)が入らなかったのは「日本側にカバーに間に合う選手が1人いた。そのためDOGSO(通称ドグソ/Denying an Obvious Goal-Scoring Opportunity/決定的な得点機会の阻止)での退場に値しない行為となるため」と説明している。
相手の大きなチャンスとなりかけたシーンだっただけに、直前のボールの失い方や対応を今後の大会で気を付けていきたいところだ。
家本政明
いえもと・まさあき/1973年生まれ、広島県出身。同志社大学卒業後の96年にJリーグの京都パープルサンガ(現京都)に入社し、運営業務にも携わり、1級審判員を取得。2002年からJ2、04年からJ1で主審を務め、05年から日本サッカー協会のスペシャルレフェリー(現プロフェッショナルレフェリー)となった。10年に日本人初の英国ウェンブリー・スタジアムで試合を担当。J1通算338試合、J2通算176試合、J3通算2試合、リーグカップ通算62試合を担当。主審として国際試合100試合以上、Jリーグは歴代最多の516試合を担当。21年12月4日に行われたJ1第38節の横浜FM対川崎戦で勇退し、現在サッカーの魅力向上のため幅広く活動を行っている。