日本代表“4バック回帰”は正しい道か? カタールW杯で3バック機能も…システムから見る今後の課題
【識者コラム】W杯直前まで4バックを採用していた過去、カタールW杯で上手くいった3バックとの違いを考察
3月23日、日本代表の森保一監督はキリンチャレンジカップ2023のウルグアイ戦に向けた公式会見を行った。その中で、ウルグアイ戦はカタール・ワールドカップ(W杯)の時の3バックから、4バックにシステムを変更することを明らかにした。
森保監督は試合に使うシステムについて聞かれると、「形としては4-2-3-1からスタートしていければなと思っています」と回答。「4-2-3-1がこれからベースになっていくかどうかという判断もありますが、まずはチャレンジしてみて、そこで決めていきたい」とした。
森保監督はサンフレッチェ広島の監督時代、ミハイロ・ペトロヴィッチ監督から受け継いで3バックを使用していた。だが日本代表では4バックを採用。理由としては歴代の日本代表が4バックを使用しており、継続性を考えたときにDF4人のほうがいいのではないかと考えたと語っていた。
実際、カタールW杯までは4バックだった。最終予選で2敗を喫して後がなくなったホームのオーストラリア戦までは4-2-3-1を、オーストラリア戦からは4-3-3(森保監督の考え方としては4-1-4-1)を使っている。
そのため今回、過去最も多用した4バックに戻すことを考えているのだろう。これまでの4年間で最も組み合わせを試したシステムでもあり、チームの積み上げを考えると第一候補の選択肢になってもおかしくはない。
だが、それでいいだろうか。
カタールW杯でベスト16にまで進出できたのは3バックが奏功したからだった。相手チームに攻め込まれて5バックになってしまっていたが、それでも4バックで臨んだドイツ戦の前半のように、バタバタとした守備にはならなかった。
また、カタールW杯で敗退が決まった後、DF谷口彰悟(アル・ラーヤン)は他国との差についてこう語っていた。
「ワールドカップに出るような国のDFは、FWに対して『同数で守り切る』さらに『少し数的不利ぐらいでも大丈夫』(というレベル)。そしてそこまで行くと攻撃の枚数を増やせる。
決勝トーナメントは得点を取らないと勝ち進めない。得点にフォーカスをすると、後ろに人数を置くより前に人数をかけるべきだと僕は思っている」
この谷口の指摘を考えると、3バックで押し込まれず守れるようになったほうが、得点の機会を増やせるのではないか。
また、強豪国との差は詰めていかなければならないが、急に追いつけるものではない。となると、3バックのカウンター狙いをベースとして、そこにオプションとして4バックを考えたほうがいいのではないだろうか。
ウルグアイ戦、コロンビア戦を4バックで戦い、相手のコンディションなどを考慮したうえで試合内容をしっかりと評価し、そこで考えを変えてもいいのではないかと思う。森保監督が言うように「新しいものを作るという気持ちを忘れず、しっかり確認作業をしながら」柔軟に対応することを願いたい。
森 雅史
もり・まさふみ/佐賀県出身。週刊専門誌を皮切りにサッカーを専門分野として数多くの雑誌・書籍に携わる。ロングスパンの丁寧な取材とインタビューを得意とし、取材対象も選手やチームスタッフにとどまらず幅広くカバー。2009年に本格的に独立し、11年には朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の平壌で開催された日本代表戦を取材した。「日本蹴球合同会社」の代表を務め、「みんなのごはん」「J論プレミアム」などで連載中。