日本代表の“問題解決”へ、名波浩コーチ指導で高まる期待 選手たちも刺激「新しい感じ」「今までと違う」

日本代表コーチに加わった名波浩【写真:FOOTBALL ZONE編集部】
日本代表コーチに加わった名波浩【写真:FOOTBALL ZONE編集部】

【識者コラム】名波コーチ主導でスローイン練習、際立つ代表チームの成熟度

 3月22日、日本代表の練習で初めて名波浩コーチが指揮を執った。

 明るい雰囲気とよく通る声で次々に新しいメニューを指揮していく。特にユニークだったのは、スローインされたボールを失わないでつなぐトレーニング。スロアーにボールパーソンがボールを渡す状況も想定しながら、狭いフィールドの中で相手選手役の妨害を受けつつパスを7本つなぐという練習を行った。

 過去、スローインの練習を報道陣に公開しながら数回行ったのはアルベルト・ザッケローニ監督だった。だがその時はスロワーを素早く代えることで相手の隙を突いてラインブレイクするというトレーニングで、主に走るのは2人のスロワー役だけだったため、強度はあまり高くなかった。

 一方、この日の練習のインテンシティー(プレー強度)は高く、パスが規定本数つながらなくとも何度も休憩を入れなければならないほどだった。明るいムードのなかで行われていたものの、選手には一瞬の判断力と正確なボールコントロール、そしてクイックネスが高いレベルで求められる練習だったと言えるだろう。

 なぜこの練習が入れられたのか。伊東純也はワールドカップ(W杯)期間中も非公開練習の時にスローインからの展開の練習があったことを明かした。ただし、「今の日本代表はスローインから奪われることや、クイックで始められない時に、ただ前に投げて跳ね返されるってことがあった」との分析があるという。

 このトレーニングが組み入れられたのは、当然ながらスローインの改善にある。そしてもう1つ分かるのは、最初の合宿で普通なら優先順位の低いスローインの練習を組み入れられるほど、今の日本代表チームは成熟しつつあるということだ。

名波コーチの指導に伊東純也や大迫敬介が期待「フレッシュさをすごく感じます」

 この日の名波コーチの指導について、伊東は「コンセプトは変わらないと言っていましたが、新しい感じだと思いました。いろいろ新しいことにチャレンジしていくことが、日本代表にとってのプラスアルファになればいいと思います」と期待を寄せた。

 大迫敬介も「名波コーチ、前田遼一コーチという新しいコーチが入ったなかで、やっぱり今までとは違う。コミュニケーションの取り方であったり、指導の仕方であったり、練習メニューも新しくなったりで、フレッシュさをすごく感じます」と刺激を受けていた。

 報道陣に非公開だった部分で「今日はビルドアップの練習などをした」と伊東は言う。カタールW杯では相手の猛攻を受け、中盤でなかなか組み立てられなかった日本代表だったが、現役時代はプレーメーカーだった名波コーチがその点を改善できるか。

 まだ練習は1日しか指揮していないが、日本代表が次のステップに進むためにはこの中盤の問題点は必ず解決しなければならない。日本代表コーチ陣の手腕が問われる。

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森 雅史

もり・まさふみ/佐賀県出身。週刊専門誌を皮切りにサッカーを専門分野として数多くの雑誌・書籍に携わる。ロングスパンの丁寧な取材とインタビューを得意とし、取材対象も選手やチームスタッフにとどまらず幅広くカバー。2009年に本格的に独立し、11年には朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の平壌で開催された日本代表戦を取材した。「日本蹴球合同会社」の代表を務め、「みんなのごはん」「J論プレミアム」などで連載中。

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