鹿島復活はまだ先か? 岩政監督が植え付けた前向きな姿勢…悔しさ滲んだ表情が示すもの

表情に悔しさを浮かべる鹿島の岩政監督【写真:徳原隆元】
表情に悔しさを浮かべる鹿島の岩政監督【写真:徳原隆元】

【カメラマンの目】雨の悪天候のなか挑んだアウェーマッチで横浜FMに敗戦

 降りしきる冷たい雨のなか鹿島アントラーズサポーターが陣取るスタンドを見つめながらピッチを去る岩政大樹監督の表情にはやはり悔しさが滲んでいた。

 J1リーグ第5節の横浜F・マリノス対鹿島アントラーズ戦。鹿島は昨年の王者に対して好勝負を演じたものの後半に2失点を喫し、追撃はFW鈴木優磨の1点だけに留まり敗戦。鹿島にとって内容的には善戦していただけに、勝ち点を挙げることもできたのではないかという思いが岩政監督の胸によぎり、悔しさがそのまま顔に表れたのだろう。

 日産スタジアムは気温8.6度で雨。厳しい状況下での試合となったが、そうした悪条件などには負けてはいられないという思いから火が付いたのか、両チームの選手たちはキックオフから精力的に試合へと入っていく。

 前半ペースを握ったのは鹿島。序盤は両サイドのFW知念慶とMF藤井智也が果敢にドリブルで仕掛け攻撃を牽引する。知念は左サイドの攻略だけでなく鈴木とともにゴール前にも進出し、得点への意欲も見せる。対して右サイドの藤井は自慢のスピードを武器にライン際を突破し、そこからゴール中央へラストパスを送るプレーでチャンスを演出していく。

 しかし、横浜FM守備陣も鹿島の攻撃に対して集中を切らすことはなく、的確にそして厳しく対応していく。仕掛けのモーションで揺さぶりをかけてくる藤井に対して、マーカーの横浜FMのDF永戸勝也も根負けすることはなく決定打を生み出させない。

 鹿島はこのサイド攻撃と後方からの一気のロングボールでゴールを目指しペースを握ったが、徐々に横浜FMに押し戻され2失点。後半23分に鈴木が一矢を報いたが勝利を手にすることはできなかった。

岩政監督はチームの出来に手ごたえも…成熟までもうワンステップ必要か

一矢報いるゴールを挙げた鈴木優磨【写真:徳原隆元】
一矢報いるゴールを挙げた鈴木優磨【写真:徳原隆元】

 現在の鹿島を評するとCBの昌子源、植田直通が対人プレーで強さを発揮する守備陣は、リーグ内でも上位の安定感を誇る。攻撃面では両サイドからの攻略とロングボールを織り交ぜたサッカーで横浜FM戦に臨んだが、この多少手荒く見える戦い方も決して悪くはなかった。選手たちが対戦相手の強さを認め、統一された勝利への手段を遂行していったことは間違いではない。

 近年のJリーグをその強さで牽引する横浜FMを相手に勝利することは簡単ではない。だが試合内容でまずまずのリズムを作りながら敗れる展開は“らしくない”と言ったら、そうした思いはかつての鹿島の幻影に過ぎず、現実を見ていないと指摘されてしまうだろうか。

 試合後の記者会見で岩政監督は、横浜FMのような強豪を相手にしても対等に戦えるところまできていると話したように、指揮官の目線から言えば今年のチームにはある程度の手応えを感じているようだ。また各選手がスタメンを取りたい、自分がチームを引っ張るんだという思いが強くなっているとも語った。

 選手たちのそうした戦う集団としての前向きな姿勢が結実し、“鹿島らしさ”を見せられるまであとワンステップといったところか。苦しみながら復活に向けて前進しているところだが、完全復調へのあと一歩の幅は大きく、理想としているレベルまでの踏破は簡単ではないようだ。

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徳原隆元

とくはら・たかもと/1970年東京生まれ。22歳の時からブラジルサッカーを取材。現在も日本国内、海外で“サッカーのある場面”を撮影している。好きな選手はミッシェル・プラティニとパウロ・ロベルト・ファルカン。1980年代の単純にサッカーの上手い選手が当たり前のようにピッチで輝けた時代のサッカーが今も好き。日本スポーツプレス協会、国際スポーツプレス協会会員。

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