勝利に導く新たな力に 磐田上昇の鍵を握るのは針谷&古川の若手コンビの活躍
【カメラマンの目】古川は大宮戦でドリブルからチャンスメイク
試合結果の明暗を表すように、後半アディショナルタイムのゴールによる劇的な勝利を挙げた大宮アルディージャが見せる歓喜とは対照的に、夕日を背に受けながらサポーターの元へと向かうジュビロ磐田の選手たちの足取りは重かった。
J2リーグ第4節の大宮対磐田。アウェーながら互角以上の展開で試合を進めていた磐田にしてみれば、引き分けでも悔しい思いが残るところ、試合終了間際の失点により勝ち点0の敗戦(0-1)という厳しい結果を突き付けられては、選手たちの落胆もひと際大きかったことだろう。
これでリーグ戦4試合を消化して1勝1分2敗。J1復帰に向けた戦いの序盤の成績としては決して満足のいく成績ではない。
この試合、磐田は中盤に位置するドリブラーの金子翔太とパサーの遠藤保仁、そして中盤を攻守にわたって支える針谷岳晃の3人を中心にリズムを作り主導権を握った。
ただ、ホームで戦う大宮も意地を見せる。大宮GK笠原昴史のファインセーブでピンチを防ぎ、攻撃に転じた際も、磐田が攻めの姿勢を強く出し、前掛かりなサッカーを展開したこともあり、空いたスペースを的確についてボールをスムーズに前線へと運んでいた。その流れは戦術的な動きを感じさせる攻撃だった。サポーターからは「シュートを打て」という声が挙がっていたようにフィニッシュプレーまでは至らなかったが、それでも劣勢の展開が続くなかチャンスは少なかったものの、ゴールへの期待を抱かせる流れは見せていた。
攻めながらも前半を0-0で終了し、さらに試合が経過しても決定打を欠く磐田は、攻撃のスイッチをさらに入れるため、後半19分に古川陽介と後藤啓介の若手を投入し勝負に出る。ボランチの遠藤も攻守にわたってより前線へと進出し、そのプレーが攻撃的となっていく。残り25分となって、時間的にもここが勝負どころという各選手の思いがチームをより攻撃的な姿勢にさせたようだ。
ゴールの期待を背負いピッチに立った磐田期待の若手2人だが、プレーは明暗を分けることになる。後藤は大宮の厳しいマークの前に沈黙したが、左サイドに入った古川は巧なステップから相手の逆をとるフェイントでサポーターを沸かせ、その果敢なドリブル突破からチャンスを生み出していった。
しかし、チームはゴールを記録することができず、アディショナルタイムにアンジェロッティの一撃によって敗戦となった。
長丁場のリーグ戦はまだ始まったばかりだが、磐田には現状から上昇へと転じるきっかけがほしいところだ。チームを勝利へと導く新たな力が――。
今シーズン急成長を遂げてレギュラー奪取に成功した針谷は試合を重ねるごとに存在感を増している。古川と後藤の若手2人と合わせて、彼らにはチーム上昇のために既存の中心選手を凌駕するような、さらなる活躍が望まれるところだ。
(徳原隆元 / Takamoto Tokuhara)
徳原隆元
とくはら・たかもと/1970年東京生まれ。22歳の時からブラジルサッカーを取材。現在も日本国内、海外で“サッカーのある場面”を撮影している。好きな選手はミッシェル・プラティニとパウロ・ロベルト・ファルカン。1980年代の単純にサッカーの上手い選手が当たり前のようにピッチで輝けた時代のサッカーが今も好き。日本スポーツプレス協会、国際スポーツプレス協会会員。