森保監督の新たな“右腕” 名波&前田コーチに期待される日本代表の変化…4年後のW杯へ解決すべき課題

森保ジャパンのコーチとして新たに招集された前田遼一氏(左)と名波浩氏【写真:Getty Images】
森保ジャパンのコーチとして新たに招集された前田遼一氏(左)と名波浩氏【写真:Getty Images】

【識者コラム】森保監督が名波氏、前田氏の招聘で狙う4年後への道筋を考察

 日本代表を率いる森保一監督は、2022年カタール・ワールドカップ(W杯)での成績を評価され、カナダ・メキシコ・アメリカ合衆国の3か国共同開催の26年大会まで指揮を執ることになった。「FOOTBALL ZONE」ではそんな“第2次森保ジャパン政権”に注目。新たに就任したコーチ陣について、識者が考察を展開している。(文=森 雅史)

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 第2次森保ジャパンには、カタール・ワールドカップ(W杯)で成功したにもかかわらず継続できなかった要素がある。それはコーチ陣の構成だ。

 森保監督の隣にいつもいて、良き相談役になっていた横内昭展コーチと、攻撃面の構築を担っていた上野優作コーチが、それぞれジュビロ磐田とFC岐阜の監督に就任し、チームを離れてしまったのだ。

 代わりに招聘されたのが名波浩氏と前田遼一氏。ともに森保監督の意向を反映した人事になったが、外部から見るとこの2人の人選に疑問点が残った。

 横内コーチは2012年の広島時代から森保監督の片腕として関係を築いてきたし、上野コーチも2012年に栃木SCのヘッドコーチに就任して以来、指導畑を歩いてきた。それに対して名波氏にはこれまでコーチの経験がない。前田氏はトップチームのコーチを経験していない。

 だが、当然ながら森保監督が2人を選んだ理由はあるはずだ。2人に期待される“役割”とも言えるだろう。カタールW杯で日本に突きつけられた課題があり、その解決を図るために2人の現役時代のプレーを考慮して呼ばれたのは間違いない。

 森保監督も2022年12月28日の就任会見で、今後の改善点として「我々がボールを握ってゲームをコントロールすること」と語っている。そしてそのためには「ボールを握りながらチャンスを作る、アタッキングサードでシュートチャンスを多くするところに長けているコーチを招聘できれば」とも語っていた。

 カタールW杯で日本はドイツ、スペインとともに先制されて相手に主導権を奪われた。その中でカウンターからゴールを奪って勝ったものの、日本が強国になるためにはもっと対等に渡り合える試合をしなければならない。

 そうできなかった理由で、特に問題だったのは鎌田大地の代わりにゲームを組み立てる選手がいないことだった。本来ならば日本の中盤の核として攻撃を担うはずだった鎌田だが、時折プレーメーカーとしての片鱗は見せたものの、実力を発揮したとは言いがたい。久保建英も局面では輝いていたが、全体に与える影響力は小さかった。

やりようによっては森保ジャパンには新たな戦術が加わることになると推測

 トップ下、あるいはボランチとして日本の攻撃を担える選手をどう考えるか。もちろんその役割を置かないという選択肢もあるだろうが、できる可能性のある選手がいる以上、試していくのは大切だ。

 となると、日本代表でもプレーメーカーとして活躍した名波氏の存在が課題を解決に導いてくれるかもしれない。クラブを率いていたときに見せていた、選手を信頼して起用するという姿勢も森保監督好みと言えるだろう。

 FWに関して言えば、カタールW杯に森保監督が連れて行った攻撃陣にはスピードタイプが多かった。逆襲速攻を仕掛けるためには適した人材が抱負だったと言えるが、ボールの収めどころとなって守備を助けるプレーが出来る選手は少なかった。

 ただし、ポストができるプレーヤーがいないわけではない。W杯メンバーの中では上田綺世に期待ができるだろうし、本大会では出番がなかったものの町野修斗も似た役割をこなすことができる。

 そんなプレーヤーたちに的確なアドバイスができるとすれば、前田氏ということになるのではないか。前田氏は控え目な性格で、選手との軋轢が生まれようもないところも組織運営のためにはいい点と言えるだろう。

 そしてこの2人が目論見どおり、中盤の核を作り、前線でポストプレーが出来るストライカーをフィットさせてくれれば、森保ジャパンには新たな戦術が加わることになる。と言うよりも、それくらいの変化がなければ、次回のW杯で日本が勝つことは難しいと考えておくべきだろう。

 この4年間で日本の攻撃を作り上げる。名波、前田両コーチの責任は重い。

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森 雅史

もり・まさふみ/佐賀県出身。週刊専門誌を皮切りにサッカーを専門分野として数多くの雑誌・書籍に携わる。ロングスパンの丁寧な取材とインタビューを得意とし、取材対象も選手やチームスタッフにとどまらず幅広くカバー。2009年に本格的に独立し、11年には朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の平壌で開催された日本代表戦を取材した。「日本蹴球合同会社」の代表を務め、「みんなのごはん」「J論プレミアム」などで連載中。

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