「ポジティブにしか考えていない」 ”チャレンジャー”のJ2磐田がルヴァン杯で得るもの
開幕節は横浜FMに0-1で惜敗
横浜F・マリノスとジュビロ磐田のルヴァンカップ開幕節が3月9日にニッパツ三ツ沢球技場で行われ、後半4分にオウンゴールであげた1点のリードを横浜FMが守り切って1-0の勝利を飾った。
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終わってみればJ1王者の貫禄の勝利と言えるが、J2の磐田も相手の強度に怯むことなくプレッシャーをかけたり、17歳のFW後藤啓介を起点に、リーグ戦で出番のなかったMF古川陽介の果敢な仕掛けなどから惜しいチャンスを作るなど、今後につながる戦いぶりだった。
日本代表のコーチとして“森保ジャパン”を支えてきた横内昭展監督は鹿児島キャンプでまず個人戦術の引き上げに取り組み、J2の開幕戦に向けてチームの仕組みを入れていく戦略を取り、ファジアーノ岡山との開幕戦は完成度という部分で不足を露呈した形の2-3敗戦だったが、1-1ドローのレノファ山口戦、2-1勝利のモンテディオ山形戦と試合を重ねるごとに、共通理解が深まっていることが見て取れる。
そこからリーグ戦で絡めていなかったメンバーを中心に組んだルヴァンカップ初戦だったが、戦力面ではリーグ戦の3チームよりも上と見られる相手に、指揮官が「F・マリノス相手に前からボールを奪いに行くことはリスクを冒すことだと思います。ただ、行ける時には行けと指示は出してます」と言うように、コンパクトに連動しながら局面で個人が見せ場を作るなど、ポジティブな要素の多い試合内容だった。
「短い準備期間の中でF・マリノスを相手に、果敢に選手たちがトライしてくれた。負けはしましたけど、自信になる内容だったと思います」
そう語る横内監督だが、だからこそ見えたクオリティーの部分やチャンスに決め切る力という部分では明確な差を示されたことも確かで、それは選手たちも痛感したはず。オウンゴールになったシーンは懸命のカバーに行ったDF鈴木海音がクリアしきれなかったが、後半の立ち上がりに前半のようなコンパクトさが欠けている状況で、間延びを上手く利用されて、DFエドゥアルドのロングパスからFWヤン・マテウスに裏を築かれた。
ルヴァンカップの勝ち上がりを考えれば痛い1敗だが、北海道コンサドーレ札幌、サガン鳥栖とJ1の猛者が集うグループで、磐田はチャレンジャーであり、J2を戦いながら高い基準を肌身に知っていける機会でもある。
J2では”降格組”の清水エスパルスと磐田だけがルヴァンカップに参戦している。日程的にはJ2のライバルより負担になるかもしれないが、「ポジティブにしか考えていない」と語る横内監督が、次節の札幌戦、鳥栖戦と続くなかで、どういうメンバーを起用していくのか。そして彼らのアピールをJ2の戦いにどうつなげていくかにも注目したい。
(河治良幸 / Yoshiyuki Kawaji)
河治良幸
かわじ・よしゆき/東京都出身。「エル・ゴラッソ」創刊に携わり、日本代表を担当。著書は「サッカーの見方が180度変わる データ進化論」(ソル・メディア)など。NHK「ミラクルボディー」の「スペイン代表 世界最強の“天才脳”」を監修。タグマのウェブマガジン「サッカーの羅針盤」を運営。国内外で取材を続けながら、プレー分析を軸にサッカーの潮流を見守る。