香川真司の険しい表情が意味するモノ 古巣・C大阪を牽引する存在になれるか
【カメラマンの目】浦和に逆転負けしたあと、香川の表情は終始厳しいもの
試合後、サポーターに挨拶へと向かうセレッソ大阪の選手たちから香川真司を探す。ファインダーに捉え、連続でシャッターを切った香川の表情はどれを見ても険しいものだった。浮かび上がった眉根を寄せる表情は、決してピッチへと差し込むオレンジ色の夕日に眩しさを感じたせいではないだろう。
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3月4日に行われたJ1リーグ第3節の浦和レッズ対C大阪戦。C大阪は前半33分に相手のオウンゴールで先制したが、ホーム初戦を迎え、サポーターの絶大な声援の後押しを受けて初勝利を目指す浦和に逆転を許して1-2で敗戦。内容的に完敗したわけではないが、浦和のサイド攻撃から繰り出されるラストパスに対して、ゴール中央での対人プレーのマークの甘さが失点へとつながってしまった。
攻撃面でもレオ・セアラのシュートがクロスバーを叩くなど、この新加入のブラジル人を中心にチャンスを作ったが、終わってみればスコアに刻まれたのは相手のミスから生まれた1点だけにとどまった。
リーグ3試合を消化した時点でC大阪を評すれば、小菊昭雄監督の下、チームの完成に向けて構築中といったところだろうか。
そのC大阪の選手にあって注目を集めるのは、やはりヨーロッパで豊富な経験を積み、古巣へと帰還した香川だ。
もちろんプレー面では全盛期の活躍を期待するのは酷というものだ。それでもヨーロッパのトップレベルで戦い抜いてきた豊富な経験に裏打ちされた彼の戦う姿勢は、きっとチームに好影響をもたらすことだろう。ベンチに控える表情でさえ精悍で勝負師としての風格が漂っているのだから。
周囲との連係はまだ不十分
では、プレー面での貢献はどうなのか。後半26分からピッチに立った香川は、ボールを受けると攻撃の起点として前線にパスを供給し、自らもゴールへと向かうオールラウンダーとしての役割をこなそうとしているのが見て取れた。まさに彼自身が得意としているプレーだ。
ただ、この浦和戦に限って言えばボールタッチの回数はそれほど多くなく、目に留まるようなゴールのチャンスを演出するキラーパスも影を潜めた。チームメイトとの連係もまだ不十分のようだ。そんな香川のプレーを実際にゴール裏から見て、こんなことが頭をよぎった。
果たしてコンディションの向上と連係面の問題は時間が解決し、数試合後にはチームを牽引する圧倒的な存在へと成り得ているのだろうかと。少なくとも今の段階ではプレー面においては、周囲の期待値までは到達していない。
万全の状態にない現状は、開幕からチームが上昇気流に乗れていないだけに、香川にも焦りがないと言ったら嘘になるだろう。試合後の険しい表情となった理由は、チームの敗戦と自らもインパクトを残せなかったことへの厳しい現実に直面したからだったのか。
いや、自分の力はこんなものではないとう闘志をみなぎらせた証だったかもしれない。切り取らたれ1枚に写るC大阪のエースナンバー8を背負う男の眼光の険しさを表しているのは後者のように思うのだが、その答えが出るのはもう数試合の時間が必要のようだ。
(徳原隆元 / Takamoto Tokuhara)
徳原隆元
とくはら・たかもと/1970年東京生まれ。22歳の時からブラジルサッカーを取材。現在も日本国内、海外で“サッカーのある場面”を撮影している。好きな選手はミッシェル・プラティニとパウロ・ロベルト・ファルカン。1980年代の単純にサッカーの上手い選手が当たり前のようにピッチで輝けた時代のサッカーが今も好き。日本スポーツプレス協会、国際スポーツプレス協会会員。