上位追走のデュッセルドルフ、1部昇格の鍵は? 日本代表MF田中碧が語る“勝利の方程式”「そこだけかなと」【現地発コラム】
1部昇格を狙える位置につけるデュッセルドルフ、代表クラスが揃い戦力十分
今季のブンデスリーガ2部開幕前、日本代表MF田中碧、U-21代表DF内野貴史、ドイツU-21代表歴のあるMFアペルカンプ真大が所属するデュッセルドルフは、1部昇格候補の1つと目されていた。
2017-18シーズンにMF原口元気(シュツットガルト)とFW宇佐美貴史(ガンバ大阪)の活躍で1部昇格を果たしたあとの2シーズンは1部で戦ったデュッセルドルフ。20年の2部降格から3シーズン目となる今季は、カタール・ワールドカップ(W杯)に出場した田中のほか、18年ロシアW杯ポーランド代表FWダビド・コフナツキ、オランダ代表歴やUEFAチャンピオンズリーグ(CL)経験もあるFWヨリト・ヘンドリクス、2部得点王のFWルーベン・ヘニングスら実力のある選手も多いだけに、戦力的には十分昇格を狙えるだけのものがある。
第22節終了後、デュッセルドルフは6位につけ、1部16位との入れ替え戦に出場できる2部3位ハイデンハイムとの勝ち点差は「8」。残り試合を考えると逆転の可能性は残しているものの、楽観視できる状況ではない。
ホームでは順調に勝ち点を積み重ねられている。11試合で8勝1分2敗という数字は全体で3位。十分昇格圏だ。だが、アウェーで大きく負け越しているのが痛い。今季9敗中、アウェーで7敗を喫しており、敵地戦績は全体で11位と大きく順位を下げてしまう。昇格を現実のものとするためには、ここが改善されないと希望は見えてこない。
第22節ホームのブラウンシュバイク戦(3-1)で勝利したあと、田中はそこを自覚していた。
「ホームでは勝ち点3を取らなきゃいけないなっていうのがいつの時もある。だから次なのかなというふうに思う。次しっかり勝てるようにやれればいいかなと思います」
昨季、アペルカンプに話を聞いていた時にも「連敗をしないこと」の大切さを口にし、少しのきっかけで流れは大きく変わることを強調していた。
「このリーグだと5~6連勝したらすぐに上に行ける。アウェーでもしっかり勝っていく。そういう積み重ねが違いになる」
アウェーでも、強豪相手でも勝ち点を積み重ねるためには何が大切になってくるのだろう。田中の答えはとてもシンプルだった。
「自分が決めれば勝てる。そこだけかなと思います。普段の試合では、基本的に1回は(ゴール)チャンスがあるので、それを決めれば勝てる。そこにフォーカスしてはいます。ボールは来ているし、シュートを打つシーンもある。自分でチャンスを作り出している。自分にフォーカスをして、責任を感じながらやりたいなというふうに思ってます」
日本代表DF板倉滉も感じたドイツ2部での「ピリピリした雰囲気」
2部からの昇格争いは毎年混戦になる。昨季もそうだった。有力候補と言われていたシャルケにしても、途中までは上位陣から勝ち点差をつけられ、監督交代を余儀なくされる時期がありながらも、終盤の追い上げで優勝での昇格を果たしている。
昨季レンタルでシャルケに加入し、昇格の立役者となった日本代表DF板倉滉(ボルシアMG)は最終戦のニュルンベルク戦後に2部での戦いを次のように振り返っていた。
「なかなか1位に上がれずに、ずっと5位とか6位とかにいましたから。ドイツの2部はずっと混戦だったので、ずっと気を抜けなかったなという印象があります。毎試合プレッシャーもあったし、ピリピリした雰囲気もあった」
メディアからのプレッシャーも相当なものがある。勝っても内容が不十分と叩かれ、負けたらこれで昇格が遠のいたと嘆かれる。アペルカンプも以前そのあたりについて口にしていた。
「フォルトゥナ(デュッセルドルフ)というクラブは1部へ行きたいクラブだし、そのためのプレーを見せられるチームだし、見せないといけないチーム。ここはメディアからの注目は大きいし、負けるとやっぱりすごく叩かれる。でもそれはみんな分かっていること。それを気にせず、自分たちのサッカーに集中して取り組んでいきたい」
アウェーでの公式戦では10月29日のホルシュタイン・キール戦(2-1)の勝利を最後に4試合未勝利だったデュッセルドルフ。敵地で行われた3月4日の第23節レーゲンスブルク戦に1-0と勝利して5位に浮上し、昇格争いに食らい付いている。
(中野吉之伴 / Kichinosuke Nakano)
中野吉之伴
なかの・きちのすけ/1977年生まれ。ドイツ・フライブルク在住のサッカー育成指導者。グラスルーツの育成エキスパートになるべく渡独し、ドイツサッカー協会公認A級ライセンス(UEFA-Aレベル)所得。SCフライブルクU-15で研修を積み、地域に密着したドイツのさまざまなサッカークラブで20年以上の育成・指導者キャリアを持つ。育成・指導者関連の記事を多数執筆するほか、ブンデスリーガをはじめ周辺諸国への現地取材を精力的に行っている。著書『ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする』(ナツメ社)、『世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)。