三笘薫の“出現以前”「日本人ドリブラーの系譜」 直線突破型、テクニシャン系…多岐に渡ったプレータイプ

(左から)鹿島時代のMF本山雅志、浦和時代の三都主、ル・マン時代の松井大輔【写真:Getty Images】
(左から)鹿島時代のMF本山雅志、浦和時代の三都主、ル・マン時代の松井大輔【写真:Getty Images】

【コラム】その名を轟かせた日本人ドリブラーの系譜を改めて振り返る

 プレミアリーグのブライトンで特大なインパクトを放つ三笘薫の出現以前、日本にはさまざまなドリブラーたちがその名を轟かせ、タイプは多岐に渡った。三笘にスポットを当てた特集を展開するなかで、このコンテンツでは日本人ドリブラーの系譜を改めて振り返る。

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 イングランド・プレミアリーグで日本代表の三笘が大活躍を見せていることで、再び「ドリブラー」という存在が脚光を浴びている。ドリブルを武器に観る者を魅了した各選手たちの特徴を改めて振り返ってみると、そのタイプはさまざまだった。

 1993年のJリーグ開幕は前身の日本サッカーリーグ時代からの有力選手が主力として活躍していたが、1998年に高卒加入となった「黄金世代」と呼ばれる選手たちの前後から一気に世代は変わり始める。そのなかでドリブルに長所を持っていた選手と言えば、鹿島アントラーズなどで活躍した本山雅志(現クランタン・ユナイテッドFC)だろう。

 左サイドを中心に相手とのタイミングを外しながら右足方向へのカットインも、縦への突破もある。それこそ、当時を知らない世代が映像で本山のプレーを見れば、三笘に似た印象を受けるかもしれない。それに加え、中央でも相手を割るようなプレーができるタイプだった。

 1999年のワールドユース(現U-20ワールドカップ)から翌年のシドニー五輪までフィリップ・トルシエ監督が率いたチームではスーパーサブとして控えた。試合中に本山が投入され、MF中田英寿が前線、MF中村俊輔がトップ下へと配置転換するのは必勝パターン。黄金時代を築いた鹿島では6度のJ1リーグ制覇を経験するなど、数々のタイトル獲得に貢献した。

 同じ時期に左利きのドリブラーとして脚光を浴びたのが、三都主アレサンドロだった。ブラジル国籍で明徳義塾高校に留学。卒業後に練習生を経て清水エスパルスに加入すると、切れのあるドリブルと左足の高いキック技術で脚光を浴びた。その後、日本国籍を取得して2002年の日韓ワールドカップ(W杯)では切り札としての期待も受け、06年ドイツW杯までジーコ監督が率いた日本代表では不動の左サイドバックとして活躍した。

 そのドリブルは技術もあるが、サイドではより直線的なものが多かった。左足アウトサイドでボールを左前方に出し、自身は右側から回り込むように相手を追い越して突破するプレーは「裏街道」とも呼ばれ、その圧倒的なスピードが可能にした。浦和レッズや名古屋グランパス、オーストリア1部ザルツブルクでもプレーしたなか、JリーグやAFCチャンピオンズリーグ(ACL)の優勝を経験している。

海外クラブでも脚光を浴びた松井大輔や乾貴士の高技術

 次の世代で、よりテクニカルなプレーで日本の枠を超えた評価を得たのが松井大輔だった。京都パープルサンガ(現京都サンガF.C.)で3年半プレーし、アテネ五輪後にフランス2部のル・マンへ移籍すると、その技術力とドリブルで一気に評価を高めた。同クラブの1部昇格に貢献すると「ル・マンの太陽」とまで称された。

 ボール扱いの巧みさや複雑なフェイントを駆使して抜きに掛かる姿は、テクニシャンタイプに分類されるだろう。意外性のあるパスを駆使するトップ下が「ファンタジスタ」と呼ばれることもあるが、松井はドリブルでそのプレーを実現する。10年南アフリカW杯では右ウイングのレギュラーで出場し、初戦のカメルーン戦では深い切り返しから入れた左足クロスで本田圭佑の先制ゴールをアシスト。現在はY.S.C.C.横浜でサッカーとフットサルの両方のチームに登録されてプレーしている。

 また、技術の高い選手が集まるスペインでその名を轟かせたのは乾貴士だ。セレッソ大阪から11年にドイツへ移籍すると、15年にスペイン1部エイバルへ。16-17シーズンの最終戦ではFCバルセロナから2ゴールを奪って一躍脚光を浴びた。正確なファーストタッチから流れるように仕掛けのドリブルへ移行し、緩急とボディーフェイントを駆使した実効性の高いプレーをするのが持ち味。18年のロシアW杯では本大会直前にメンバー入りするとセネガル戦とベルギー戦でゴール。印象的な活躍を見せ、現在は清水でプレーしている。

 そのほか、得点力のあるアトランタ五輪日本代表の中心だった前園真聖、浦和やアルビレックス新潟でプレーし“和製オルテガ”の異名を取った田中達也、浦和所属時にJリーグで自陣からのロングドリブルでのゴールを決めている永井雄一郎(現はやぶさイレブン)といった選手たちが記憶に残る。

 近年の世代ではFC東京から海外移籍した中島翔哉(現アンタルヤスポル)、横浜F・マリノスの優勝とリーグ得点王にMVPも獲得した仲川輝人(現FC東京)もドリブラーとして名を残す。22年カタールW杯の日本代表でプレーした選手ではスタッド・ランスの伊東純也もJリーグ時代から常に名前が挙がる選手だ。

 スピードと技術の両面で魅了するドリブルはサッカーの見せ場。必死で止めに掛かるディフェンスを鮮やかにかわして突破していく姿に、多くのファンが歓声を浴びせ続けるだろう。

(轡田哲朗 / Tetsuro Kutsuwada)

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