今季J1の“注目選手10選” 開幕いきなり“スーパーボレー弾”の湘南MF、川崎主将MFに懸かるレジェンドの役割とは?

川崎MF橘田、名古屋FWユンカー、横浜FMのMF渡辺【写真:徳原隆元 & Getty Images】
川崎MF橘田、名古屋FWユンカー、横浜FMのMF渡辺【写真:徳原隆元 & Getty Images】

【識者コラム】開幕節の活躍を受けインパクトを残した10人を選出

 Jリーグは2月17日に開幕。すでに第2節を迎えるJ1でもさまざまな選手が頭角を現し始めている。「FOOTBALL ZONE」でも今大会の特集を組み、今季J1で見るべき“注目選手”10人を識者にピックアップしてもらった。(文・構成=河治良幸)

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■MF佐野海舟(FC町田ゼルビア→鹿島アントラーズ)
昨季リーグ成績(J2):20試合1得点

 J2のFC町田ゼルビアから加入してきた新鋭。昨シーズンのJ2で90分あたりのボール奪取数がNo.1と言う実績通り、開幕戦から中盤のボール奪取で勝利を支えた。自分が奪うだけでなく、もっと周りにボールを奪わせるサポートもしていきたいという佐野。2000年12月30日生まれで、2日違いでパリ五輪世代ではない。一方でU-20アジアカップに出場する弟の佐野航大には「自分があまりできていない国際経験をどんどん積んでほしい」と投げかけるが、鹿島の主力として躍進を果たせばA代表も視野に入ってくるだろう。

■MF橘田健人(川崎フロンターレ)
昨季リーグ成績(J1):21試合2得点

 大卒3年目にして谷口彰悟(アル・ラーヤン)からキャプテンマークを引き継いだ。プレーエリアの広さ、判断スピードは既にJ屈指であり、A代表入りを待望する声も強い。タイトル奪還を誓うシーズン。その最大のライバルである横浜F・マリノスとの開幕戦では前半に2点を許し、ジェジエウの退場で10人と苦しくなった状況から、勝負を諦めない姿勢が後半アディショナルタイムのゴールに表れた。基本は攻守両面で要になる選手だが、かつての中村憲剛がそうであったように、次に決めるゴールはチームを勝利に導くものになるかもしれない。

■MF小野瀬康介(ガンバ大阪→湘南ベルマーレ)
昨季リーグ成績(J1):26試合3得点

 湘南の“エリア88”。ガンバ大阪からまさかの退団となったが、そのG大阪でコーチだった恩師山口智監督の直々の“ラブコール”を受けて、湘南ベルマーレにやってきた。「必ず康介を輝かせる」という指揮官の言葉通り、開幕戦は難敵のサガン鳥栖を相手に、中盤から幅広く躍動。平岡大陽のゴールをアシストしたかと思えば、CKに走り込みながら右足で強烈なシュートを突き刺した。J2レノファ山口に在籍した2018年には前半戦だけで10得点を記録した決定力の持ち主でもある。中盤から前向きなプレーを繰り出していけば、湘南に多くのゴールとアシストをもたらしそうだ。

■MF渡辺皓太(横浜F・マリノス)
昨季リーグ成績(J1):24試合0得点

 昨シーズンのMVPだった岩田智輝(セルティック)がいなくなったチームにあって、同じ東京五輪世代でもある渡辺の働きが、リーグ優勝の重要な鍵になりうる。開幕戦でもキャプテンの喜田拓也と共にボランチを担い、90分にわたって中盤をオーガナイズし、川崎フロンターレ戦の勝利に貢献した。直接的なゴールやアシストはお預けとなったが、持ち前の技巧的なプレーだけでなく、主軸として国内外のタイトルを狙う上で、より発信力が求められるのは本人も強く自覚しているようだ。パリ五輪世代の藤田譲瑠チマやU-20日本代表の山根陸など、有望な若手としのぎを削りながら、再び日の丸を掴み取りにいく。

■MF小林祐希(ヴィッセル神戸→北海道コンサドーレ札幌)
昨季リーグ成績(J1):9試合3得点

 昨シーズンは途中加入したヴィッセル神戸残留の立役者となったが、札幌に新たな挑戦の場を求めた。ミハイロ・ペトロヴィッチ監督が掲げる連動性の高いアタッキングフットボールにおいても、明確なアクセントになれるタレントであり、相手を見ながら柔軟にプレーを選択していける。セットプレーのキッカーとしても優れており、“福森の左足”以外にも強力なオプションが加わったことは心強い。本人は特別にチームを引っ張る意識はないようだが、国内外での豊富な経験は若い選手たちに好影響をもたらしそうだ。

浦和MF小泉の成長に期待、ゴール取り消しと悔しい思いをした広島MF川村の名前も

■MF小泉佳穂(浦和レッズ)
昨季リーグ成績(J1):27試合3得点

 もともと非凡な攻撃センスを備えるが、マチェイ・スコルジャ監督の元で、覚醒的な成長を遂げる可能性がある。高い位置でボールを奪って、そのままゴールに向かう攻撃で主に「10番」の役割を担う。指揮官はゴールに向かう仕事だけでなく、チームのベクトルとしての期待を懸けているが、やはり多くのフィニッシュに関わるポジションとして、多くのゴールとアシストを記録できれば浦和レッズの成績にも直結しそうだ。

■FWキャスパー・ユンカー(浦和レッズ→名古屋グランパス)
昨季リーグ成績(J1):21試合7得点

 就任2年目の長谷川健太監督にとっては躍進の“ラストピース”になりうるストライカーだ。浦和に加入して早々ゴールを量産したが、怪我やコンディション不良に悩まされ、リカルド・ロドリゲス前監督のもとで2シーズン16ゴールと言う結果だった。名古屋グランパスでは3-4-2-1の1トップを担うが、身体を張るポストプレーや幅広く攻撃に関わるより、ラインの背後を狙いながらボックス内でクロスやラストパスに合わせる役割にフォーカスできるはず。横浜FCとの開幕戦はコーナーキック(CK)のこぼれ球を押し込んで移籍初ゴールを記録したが、流れからのゴールにも期待が懸かる。

■MF齊藤未月(ガンバ大阪→ヴィッセル神戸)
昨季リーグ成績(J1):26試合2得点

 昨シーズンは湘南から期限付き移籍したG大阪で残留に奮闘したが、神戸に環境を移して飛躍を目指している。開幕戦は4-3-3のアンカーで立ち上がりは押し込まれた状況で粘り強くバイタルエリアを守り、機を見たミドルシュートでチームに勢いを引き寄せた。そこから中盤で強度の高いプレーで後半の決勝点につなげ、1-0の勝利を支えた。2019年にU-20ワールドカップ(W杯)を経験するなど、A代表入りも期待されていたが、初の海外移籍となったロシアでは不運な怪我に不安も相まって、飛躍のきっかけを掴めなかった。メンタル的にタフな選手だけに、前向きに好パフォーマンスを続けていけば、道も開かれるはずだ。

■GK谷 晃生(湘南ベルマーレ→ガンバ大阪)
昨季リーグ成績(J1):31試合0得点

 3シーズン期限付き移籍した湘南で守護神の地位を掴み取り、正GKとして東京五輪を経験。さらにA代表にも選ばれるなど、経験を重ねてきた。そこから日本屈指のGKと評価される東口順昭のいるG大阪に戻ったのは強い覚悟の表れだろう。かつて名古屋で楢崎正剛と若き日の川島永嗣が繰り広げたように、史上稀に見るハイレベルなポジション争いで、国際的に通用するGKとしての基盤が築いていくかもしれない。開幕戦のピッチに立ったが、百戦錬磨の東口が黙ってはいないだろう。そしてダニエル・ポヤトス新監督が率いるガンバの躍進をいかに支えるかも注目される。

■MF川村拓夢(サンフレッチェ広島)
昨季リーグ成績(J1):16試合3得点

 サンフレッチェ広島のアカデミー出身であり、愛媛FCで3シーズン経験を積んで、昨シーズン帰還した。中盤ならボランチもシャドーもこなせるマルチなタレントで、すでに才能の片鱗は見せていたが、2年目となるスキッベ監督の元、よりゴールに近いシャドーでさらなるブレイクを果たす期待は高い。開幕戦はCKからのヘディングシュートがビデオ・アシスタント・レフェリー(VAR)の誤審によりゴールにならなかった。結果として広島は0-0で札幌と引き分けたが、川村はその後にもあったチャンスを決めきれなかったのがいけないと自分の矢印を向ける。その前向きな意識がシーズンでの大活躍につながることを期待したい。

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河治良幸

かわじ・よしゆき/東京都出身。「エル・ゴラッソ」創刊に携わり、日本代表を担当。著書は「サッカーの見方が180度変わる データ進化論」(ソル・メディア)など。NHK「ミラクルボディー」の「スペイン代表 世界最強の“天才脳”」を監修。タグマのウェブマガジン「サッカーの羅針盤」を運営。国内外で取材を続けながら、プレー分析を軸にサッカーの潮流を見守る。

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