エース小川航基、渾身ヘッドの衝撃 決定力良し、収めても良し…横浜FCの命運を握る存在なのは「間違いない」

横浜FCのFW小川航基【写真:徳原隆元】
横浜FCのFW小川航基【写真:徳原隆元】

【カメラマンの目】試合を振り出しに戻し、感情爆発させた横浜FCの18番

 J1リーグ第2節・湘南ベルマーレ対横浜FC戦。静かな霧雨がピッチを濡らす試合終盤の後半38分、横浜FCのエースFW小川航基が躍動した。ここまで1-2とリードを許していた横浜FCは、左コーナーキックのチャンスに小川が渾身のヘッドを湘南ゴールに叩き込む。

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 試合を振り出しに戻した一発に感情を爆発させる横浜FCの18番。その姿をカメラのファインダーが捉える。切り取られた写真からはストライカーとしての本能を発揮した小川のほとばしるエネルギーが伝わってきた。

 チームに勢いを付ける開始わずか12秒の先制点と合わせて、重要な局面で2ゴールをゲットした小川は横浜FCの得点源として、その存在が絶大であることを見せつけた。しかし、小川が存在感を発揮したのは、なにもゴールゲットの場面だけにとどまらなかった。攻撃全般における戦術の柱としてチームを支えていた。

 先制点の起点にもなったDFガブリエウのロングフィードが示すように、横浜FCの攻撃パターンの1つに前線の選手に向けて後方から放つロングキックがある。湘南戦ではピッチを広く使ったサイドチェンジも多用し、敵の守備網を揺さぶった。

 後方から供給されるボールも、前線の選手が高い確率でキープすることができなければ威力は発揮されずチャンスも生まれない。その点で横浜FCは、小川が長身を活かして湘南DFの大岩一貴や杉岡大暉と激しい空中戦を演じ、前線のターゲットとしてポストプレーをダイナミックにこなしていた。記録から判断すれば小川のプレーは、チームの全ゴールを叩き出した得点感覚がクローズアップされるところだが、接触プレーに臆することなく最前線で威力を発揮したポストプレーへの評価も忘れてはならない。

 横浜FCはチーム全体では途中出場のFWカプリーニがブラジル人らしく巧みなボールキープからチャンスを演出し、FW山下諒也といったドリブルでの仕掛けを強く意識した選手が入ることによって、パワープレーを全面に出して戦うスタイルにアクセントが加わった。中盤に入った新加入のMF三田啓貴もタイミングを計り前線に良くコントロールされたロングパスを供給。チームが向かおうとしているコンセプトを意識したプレーを見せた。

 ただ、現実は2試合で勝ち点1の未勝利。ドリブラーが果敢に突破を図るものの最終局面を打開できない場面もあり、連係面や戦い方に改善の余地があることは否めなかった。強豪クラブとの対戦でも湘南戦で見せたようなダイナミックなプレーがチームとして表現できるのかも未知数だ。

 その横浜FCにあって、チームの命運を握っているのは他の誰でもなく最前線で戦う小川であることは間違いない。

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徳原隆元

とくはら・たかもと/1970年東京生まれ。22歳の時からブラジルサッカーを取材。現在も日本国内、海外で“サッカーのある場面”を撮影している。好きな選手はミッシェル・プラティニとパウロ・ロベルト・ファルカン。1980年代の単純にサッカーの上手い選手が当たり前のようにピッチで輝けた時代のサッカーが今も好き。日本スポーツプレス協会、国際スポーツプレス協会会員。

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