岡山新2トップが「堂々デビュー」 J2で躍動→パリ五輪行き狙う2人のストライカー
櫻川ソロモン&坂本一彩、新加入組が磐田戦でいきなり大活躍
ファジアーノ岡山は2月18日のJ2開幕戦で、ジュビロ磐田とアウェーで対戦。3-0とリードした終盤に、磐田のスーパールーキーFW後藤啓介に2ゴールを許してひやっとさせられたが、3-2で勝利した。
大活躍を見せたのはFW櫻川ソロモンとFW坂本一彩の新鋭2トップだ。21歳の櫻川は同じJ2のジェフユナイテッド千葉から、19歳の坂本はJ1ガンバ大阪から期限付き移籍で加入した。2人とも来夏のパリ五輪を目指す代表メンバーの有力候補であり、坂本はU-20アジアカップのメンバーにも選ばれている。
岡山はカタール・ワールドカップ(W杯)でゴールを決めたオーストラリア代表FWミッチェル・デュークが町田に移籍するなど、攻撃的なポジションに入れ替わりが生じたが、新加入組の櫻川と坂本がプレシーズンから木山隆之監督の評価を勝ち取り、開幕スタメンでそれぞれゴールを挙げた。
櫻川は前半26分、コーナーキック(CK)からセンターバックのDF柳育崇がヘッドで当てたボールを押し込む先制ゴール。一方の坂本は同31分に櫻川のポスト直撃弾からU-20代表MF佐野航大が左ワイドで拾ったボールを受けて、角度のないところから右足シュートでGKの脇を破った。
さらに後半、磐田のペースになっていた一瞬の隙を築く形で、坂本を起点に櫻川がシュート。ディフェンスにブロックされたが、そのこぼれを佐野が飛び込む形で、2人揃って3点目に絡んでいる。木山監督が2人の活躍を振り返った。
「ソロモンにしても、ジェフで去年はほとんどの試合で1トップを張っていた選手ですし、イサにしても、僕がガンバのコーチの時にユースから上がることが決まって、トレーニングを見てました。彼は本当に才能があって、素晴らしいものがあるけど、ガンバの層が厚いところでは難しいというところで。ここで結果を出してその先へという思いが強い2人です」
その覚悟はプレシーズンからインパクトがあったと木山監督は語る。
「練習試合でも点を取り続けていたので。今日も取ると思っていましたし、彼らに要求しているのはFWである以上、チームの守備やポゼッションでボールを受けるタスクだけじゃなくて、ゴールを求めている。タイプの違う2人ですけど、存分に(持ち味を)出せていたと思うので、続けていくことが大切だと思います」
木山監督が実力を高評価「正直、痛いです。あの2人がいないのは」
坂本はU-20アジアカップで、佐野とともに、ここから何試合かチームを離れることが決まっている。それについて木山監督は「正直、痛いです。あの2人がいないのは」と認めるが、代わりに出番を得る選手たちに期待を懸けている。
ジェフユース出身の櫻川は「千葉は愛してますし、愛しているクラブを離れるのは大きな決断だったんですけど、自分の未来のためにこのクラブに来て、本当に結果で返さないといけないという思いはあります」と語る。目標は岡山をJ2優勝に導くこと、そして昨年「正直、見ていて悔しかった」と語る横浜FCのFW小川航基が26ゴールを記録したような結果を残すことだ。その先には当然パリ五輪がある。
ここから代表活動に入る坂本は木山監督の「正直、痛い」という発言について「そう言ってもらえるのはありがたいというか、嬉しいです。次は代表に行くので切り替えて、代表のほうでも活躍できるようにしたい」と語った。当然、自身が不在となる間に代わりにチャンスをもらえる選手がいるものの、U-20W杯の予選を兼ねるアジアカップで世界の扉を開く活躍が、岡山にも還元されることにつながる。
櫻川と坂本。世界を目指していく2人のストライカーが、岡山を悲願のJ1昇格に導くのか。その先も見据えながら注目したい。
河治良幸
かわじ・よしゆき/東京都出身。「エル・ゴラッソ」創刊に携わり、日本代表を担当。著書は「サッカーの見方が180度変わる データ進化論」(ソル・メディア)など。NHK「ミラクルボディー」の「スペイン代表 世界最強の“天才脳”」を監修。タグマのウェブマガジン「サッカーの羅針盤」を運営。国内外で取材を続けながら、プレー分析を軸にサッカーの潮流を見守る。