新たな守護神の誕生の予感? 守備陣の奮闘を支える横浜FM守護神の逞しい存在感
【カメラマンの目】前半19分のシュートストップなど安定したプレーを披露、ファインダーに写る姿を激写
「緊張しましたー」
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試合後、サポーターに挨拶へと向かう横浜F・マリノスの選手たちのなかから、GKオビ・パウエル・オビンナにカメラの照準を合わせる。そこで「リーグ開幕戦で緊張した?」というこちらからの問いかけに、彼が答えた言葉が冒頭のそれである。
先週の「FUJIFILM SUPER CUP(富士フィルム・スーパーカップ)2023」に続き先発出場を果たしたオビは、そんな答えとは裏腹に試合終盤に1点を失ったものの、安定感のあるプレーを披露。大事な開幕戦の勝利に貢献した。レンズの向こうでポーズを撮る表情も実に逞しかった。
2023年のJ1リーグ開幕戦となった川崎フロンターレ対横浜FMの一戦。試合は前半4分に西村拓真のゴールが決まり横浜FMのリードで進んでいった。
開始早々にリードを許した川崎だが、すぐさま反撃に出る。選手たちがチームとしての戦い方を熟知しているだけあって、得意のパスワークを駆使し、自陣から中盤までは実にスムーズにボールをつないでいく。
しかし、川崎にとって誤算だったのは、怪我のため本調子とはほど遠い状態にあり、強行出場の感が否めなかったとはいえ、本来なら攻撃の中心となるはずの家長昭博が、前半で交代してしまったことだ。
前線のリーダーを45分で失うことになった川崎だが、それでも果敢に攻撃を仕掛けていく。左サイドに張るマルシーニョを中心に横浜FMの守備網の攻略に着手していった。得意のドリブルで猛然と横浜FMゴールへと切り込んで行くマルシーニョを同サイドのDFの佐々木旭がサポートする。佐々木は試合を通してドリブルでの敵陣突破だけでなく、精度の高い好パスを配給しチャンスを演出した。
この攻撃に対して横浜FMはタイトな守備で対抗する。松原健がマルシーニョに激しく食らいつき、ゴール前では畠中慎之輔を中心にディフェンス陣が身体を張って川崎の攻撃を防いだ。
最後の砦であるオビも好セーブでピンチを救った。前半19分の遠野大弥との1対1となった場面も鋭い飛び出しでゴールを死守。このプレーは90分間を通してオビのハイライトと言えるプレーだった。
横浜FMは破壊力のある攻撃陣がチームの代名詞となっているが、開幕戦では川崎を相手に終盤の1失点だけに切り抜けた守備の健闘がなにより光った。その守備陣を最後尾で支えるのがオビだ。おそらく緊張などしていない、ピンチを冷静な判断で切り抜けたトリコロール軍団のゴールマウスに立つオビのプレーは、優勝を目指すチームにとって頼もしい守護神の誕生を予感させるのに十分な活躍ぶりだった。
徳原隆元
とくはら・たかもと/1970年東京生まれ。22歳の時からブラジルサッカーを取材。現在も日本国内、海外で“サッカーのある場面”を撮影している。好きな選手はミッシェル・プラティニとパウロ・ロベルト・ファルカン。1980年代の単純にサッカーの上手い選手が当たり前のようにピッチで輝けた時代のサッカーが今も好き。日本スポーツプレス協会、国際スポーツプレス協会会員。