フライブルク堂安律の現在地 自ら科す“ノルマ”「メッシがなんで点取るかといったら…」【現地発コラム】
手応えを感じている一方、シビアに自己分析する堂安 「実力を測るいい相手」は?
フライブルクで活躍する日本代表MF堂安律の現地評価は高い。プレーの連続性、1対1での鋭さ、攻撃に変化を付けるアイデア、守備での実行力……本当に幅広くチームに貢献し、その1つ1つのプレークオリティーが高水準で安定している。
試合全体の流れを冷静に見定め、慌てることなく、それぞれの状況で自分がすべきプレーに集中して取り組めているのが印象的だ。前節シュツットガルト戦(2-1)でも前半組織立った相手の守備に苦しみ、なかなか決定機を作れないでいたものの、堂安は極めて冷静に試合展開をイメージできていたという。
「ブンデスリーガは傾向的にかなり前半タイトに来て、後半はオープンになるっていうのがある。それこそワールドカップ(W杯)でも、ドイツ戦ではそのあたりをチーム分析として落とし込んでました。このリーグのそうした傾向は分かってきているので、そこは開き直りながら、しっかりタスクこなしながら、後半チャンスっていうのをイメージしながらプレーをしてましたね」(堂安)
その言葉どおり、後半になるとフライブルクがイニシアティブを握り、好チャンスを作り出していく。堂安は相手守備ラインの裏に上手く抜け出してシュートに持ち込み、相手との1対1を制してチャンスメイクしたりと躍動した姿を見せていた。後半25分には韓国代表MFチョン・ウヨンのパスから相手ファールを誘い、決勝点となるPKを奪取した。
「あの展開は得意なので、ハードワークできる自信もありますし、(相手守備間の)あそこでボール受けれれば、チャンスになると分かっていた」
手応えを感じている一方、自分を甘やかすつもりは全くない。むしろシビアに分析している。
「間違いなく仕掛けでは抜け切れるようになってます。(シュツットガルト戦ではW杯で)負けたクロアチアのボルナ・ソサがいたので、実力を測るいい相手だなと思ってプレーしていた。そこで結果が出せればもちろん最高だったんですけど、今は自分の実力がそこまでってことなので。しっかり自分を見つめながら。逆に、結果だけだと思います。それが一番難しいですけど」
高まるゴールへの意識「シュートを5本打つというのはノルマにしている」
調子は相当いいし、プレーのクオリティーは高い。それだけに得点という結果が付いてくるかどうか。次のステップへ進んでいくための超えなければならない壁。そのために自分に課しているノルマもあると明かしてくれた。
「シュートを5本打つというのはノルマにしている。点を取るという意識もありますけど、シュート5本打ってるイコール(ゴールの)確率が間違いなく上がる。毎試合『シュート5本は打つ!』と口ずさみながら、プレーしてます。(リオネル・)メッシとかがなんで点取るのかといったら、やっぱシュートを打ってる。そこは関係していると思います。今日だって(相手に)当たって入ったシーンはオフサイドになりましたけど、ああいうゴールって日本人は少ないと思うので。それは自分がやっていくべきかなと思います」
そう語るシーンは後半5分。ミヒャエル・グレゴリッチのパスを受けると、素早く左足でシュートに持ち込んだ。シュツットガルトMF]アタカン・カラソルの足に当たって方向を変えたボールはゴールネットを揺らしたが、直前のシーンでグレゴリッチがオフサイドだったためにノーゴールに。とはいえ、相手守備が乱れた瞬間を逃さずにシュートへ持ち込んだプレーは見事だった。
「彼がオフサイドでなければ(笑)。しっかり結果に集中して、何度も自分に言い聞かせて。満足せず、結果に向けてプレーしていきたいと思います」
ここまでリーグでは意外にも2得点だが、得点チャンスには十分絡めている。ここから数字をどこまで伸ばしていけるかが、本人にとっても、そしてフライブルクの最終順位にとっても重要なファクターになるはずだ。
「全コンペティションで10ずつはいきたいと思っている。得点10、アシスト10。いま4得点6アシスト。アシストは仕掛けたり、パスを出せれば、間違いなく勝手に付いてくると思ってるので、ゴールを増やしながら。ゴールというのは、やっぱり自分の課題ではある」
チームへの貢献はそのままに、貪欲に得点を狙う堂安の活躍次第でチームの2年連続UEFAヨーロッパリーグ(EL)、あるいはUEFAチャンピオンズリーグ(CL)出場が現実味を帯びてくるはずだ。
(中野吉之伴 / Kichinosuke Nakano)
中野吉之伴
なかの・きちのすけ/1977年生まれ。ドイツ・フライブルク在住のサッカー育成指導者。グラスルーツの育成エキスパートになるべく渡独し、ドイツサッカー協会公認A級ライセンス(UEFA-Aレベル)所得。SCフライブルクU-15で研修を積み、地域に密着したドイツのさまざまなサッカークラブで20年以上の育成・指導者キャリアを持つ。育成・指導者関連の記事を多数執筆するほか、ブンデスリーガをはじめ周辺諸国への現地取材を精力的に行っている。著書『ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする』(ナツメ社)、『世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)。