三笘薫、決勝ヘッド弾はなぜ生まれた? ボーンマス戦で「どうしよう」と苦心→「入るな」へ蘇った訳【現地発コラム】

決勝点を挙げ祝福される三笘薫【写真:ロイター】
決勝点を挙げ祝福される三笘薫【写真:ロイター】

2つの悪条件が重なったボーンマス戦

“one of those matches”――直訳すると「それらの試合の1つ」だが、ニュアンスを正確に汲み取って訳すなら「そんな試合もあるさ」となるだろう。英国では番狂わせや思いどおりに事が運ばなかった試合を語る際に用いる常套句である。

 現地時間2月4日に行われたプレミアリーグ第22節のエバートン対アーセナルは、まさにそんな試合の典型だった。アーセナルが71%ものボールポゼッションを保持し、15本もシュートを浴びせたにもかかわらず、0-1で敗れたのだから。

 イングランド1部ブライトンにとっても、同日にホームで戦ったプレミアリーグ第22節のボーンマス戦は危うく「そんな試合もあるさ」となる試合展開だった。

 好調だったチーム状況とは対照的に、苦戦を強いられた理由は2つ考えられる。1つ目は降格圏に沈むボーンマスがアウェーで最低でも勝ち点「1」をもぎ取るべく守りを固めたこと。観客が白けるような見どころのない展開を覚悟のうえでフィールドプレーヤー全員が自陣にこもり、攻撃はカウンターに頼る“アンチ・フットボール”を徹底した。

 もう1つは、ブライトンの先発メンバーから中盤の主力3人が欠けていたことだろう。MFアダム・ララーナは故障で、MFアレクシス・マック・アリスターは出場停止、今冬に移籍騒動で揺れていたMFモイセス・カイセドはこの試合に臨む気持ちの整理ができていなかったのかベンチスタートになった。

 守りを固める相手に主力3人の不在。2つの要素が重なったためか、前半は「そんな試合もあるさ」のムードにMF三笘薫が飲まれてしまったかのように見えた。

森 昌利

もり・まさとし/1962年生まれ、福岡県出身。84年からフリーランスのライターとして活動し93年に渡英。当地で英国人女性と結婚後、定住した。ロンドン市内の出版社勤務を経て、98年から再びフリーランスに。01年、FW西澤明訓のボルトン加入をきっかけに報知新聞の英国通信員となり、プレミアリーグの取材を本格的に開始。英国人の視点を意識しながら、“サッカーの母国”イングランドの現状や魅力を日本に伝えている。

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