“プロ3人誕生快挙”の高校サッカー部が活況 相次ぐ海外からの指導者売り込み、入学希望者が殺到する理由

ジェリー・ペイトン前監督(左端)、上船利徳GM兼監督(中央)、ゲルト・エンゲルス氏(右から2番目)、ゼムノビッチ・ズドラブコ氏(右端)【写真提供:相生学院高校】
ジェリー・ペイトン前監督(左端)、上船利徳GM兼監督(中央)、ゲルト・エンゲルス氏(右から2番目)、ゼムノビッチ・ズドラブコ氏(右端)【写真提供:相生学院高校】

広がる欧州進出の機会、Jリーガーを飛び越し「早く欧州でプロとして活躍」

 海外の指導者に触れ、その先にはドイツを中心に欧州進出の機会が広がっているのも同校の特徴だ。

「一期生でドイツへ渡った山崎遥稀は、卒業後アレマニア・アーヘンのU-19に加わり、現在は同国5部のチームのレギュラーで頑張っています。現在も卒業生と在校生を合わせて4人がドイツのクラブに練習参加をしています」

 サッカー小僧たちの夢は、すでにJリーガーを飛び越して「早く欧州でプロとして活躍したい」に変わっている。上船監督は、チームに不可欠な主力メンバーでも、チャンスがあれば躊躇なくプロクラブの練習参加等に送り出しており、3年生になるまで戦力として抱えるつもりは毛頭ない。実際1年生ながら1人だけ大人に混じってJクラブのキャンプに参加中の有望株もいる。

「国際的には十代半ばすぎでトップシーンに出ていく逸材が少なくない。でもそれは現状の日本のシステムでは難しい。そこに風穴を開けたいと思っています」

 経験豊かな外国人指導者と若い野心的な日本人指導者が刺激し合い、大志を抱く選手たちが飛び込んでいく。それは時代のニーズから生まれた必然なのかもしれない。今ではJクラブのユース昇格を断り、淡路島で夢を育む選手たちも目立つようになっている。

(加部 究 / Kiwamu Kabe)

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加部 究

かべ・きわむ/1958年生まれ。大学卒業後、スポーツ新聞社に勤めるが86年メキシコW杯を観戦するために3年で退社。その後フリーランスのスポーツライターに転身し、W杯は7回現地取材した。育成年代にも造詣が深く、多くの指導者と親交が深い。指導者、選手ら約150人にロングインタビューを実施。長男は元Jリーガーの加部未蘭。最近選手主体のボトムアップ方式で部活に取り組む堀越高校サッカー部のノンフィクション『毎日の部活が高校生活一番の宝物』(竹書房)を上梓。『日本サッカー戦記~青銅の時代から新世紀へ』『サッカー通訳戦記』『それでも「美談」になる高校サッカーの非常識』(いずれもカンゼン)、『大和魂のモダンサッカー』『サッカー移民』(ともに双葉社)、『祝祭』(小学館文庫)など著書多数。

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