原口元気が語る“ウチららしい”サッカー 相手を飲み込む勢いとひっくり返すパワー「それが僕らの一番の強み」
【ドイツ発コラム】再開後初戦で勝利のウニオン・ベルリン、原口が“試合の入り方”を反省
カタール・ワールドカップ(W杯)開催のために中断されていたブンデスリーガがいよいよ再開された。欧州各国と比べて長めに準備期間が取られていたため、各クラブは十分な取り組みができたはず。第15節終了時に中断となり、実はまだシーズンを折り返してもいない。
中断前の調子がそのまま反映されるかは、ここからの数試合の内容と結果で見えてくるだろう。
原口元気が所属するウニオン・ベルリンはホッフェンハイムに3-1と逆転勝利し、順位を3位へ上げている。中断する前の数試合はUEFAヨーロッパリーグ(EL)やドイツカップとの過密日程の影響もあり、持ち味だったインテンシティーの高さや激しい守備が影を潜めてしまっていた。
再開後初戦となったホッフェンハイム戦でも「試合の立ち上がりから持ち味を発揮」というよりは、「打開策を見出せないまま膠着状態が続く」試合展開となっていた。自分たちでボールを持っても2トップへのロングボールが多い。
ホッフェンハイム戦でスタメン出場した原口は、そのあたりについて次のように語っていた。
「2か月ぐらい試合(期間)が空いたなかで、変なリスクを冒すより最初の入りは(セーフティーファースト)という感じだった。ただ逆にそのせいで相手にリズムを掴まれたかなっていうのはちょっとあった。簡単に蹴りすぎたし、ボールを渡しすぎていた。もう少し最初から自分たちがこの2か月間練習してきたことをやったほうが良かったのかな、とちょっと思いました」
守備陣でボールを持って攻撃の起点を作ろうとする時、原口はいつでもパスを受けられるようにポジショニングに気を配っている。相手がダブルボランチなので、その脇にできたスペースに顔を出して、ボールを前に運ぶためのきっかけを作るプレーも見せていた。
ペナルティーエリアに入る頻度も多い。15分には敵陣右サイドでボールをカットして味方へパスを渡すと、するするとペナルティーエリア内まで走っていく。左サイドからのクロスは飛び込んだ原口の頭上を越えたが、この動きに相手DFが引っ張られた。うしろのスペースからクリストファー・トリンメルがフリーでヘディングシュート。得点とはならなかったが、味方のシュートチャンスを生み出したいい動きだった。
動きはいい。だからもっとボールが欲しい。もっとできるから、もっと生み出せるから。
「もうちょい(ボールを)くれないと困るなっていうのは正直あって。僕的には、ボランチの位置まで下がってたりもしたんだけど、チームとしてそれを求められてない。CF(センターフォワード)にボールが入った時にどれだけ助けられるかっていうのを言われていた」
CFがボールを収める、あるいは味方の攻撃を引き出せるのであれば、そうした戦い方にもメリットはある。ただ、相手だってそうしたウニオンの狙いは分かっている。セカンドボールへのポジショニングに気を配るのは相手も同じだ。どれだけ放り込んでもそこからチャンスにつながっていかず、逆に前半終了間際には相手の右サイドからの突破を抑えることができず、相手のトーゴ代表FWイーラス・ベブに先制ゴールを許してしまう。
中野吉之伴
なかの・きちのすけ/1977年生まれ。ドイツ・フライブルク在住のサッカー育成指導者。グラスルーツの育成エキスパートになるべく渡独し、ドイツサッカー協会公認A級ライセンス(UEFA-Aレベル)所得。SCフライブルクU-15で研修を積み、地域に密着したドイツのさまざまなサッカークラブで20年以上の育成・指導者キャリアを持つ。育成・指導者関連の記事を多数執筆するほか、ブンデスリーガをはじめ周辺諸国への現地取材を精力的に行っている。著書『ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする』(ナツメ社)、『世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)。