サガン鳥栖が主力の大量流出阻止→タレント獲得 “NEXT鎌田大地”誕生も秘めた新チームへの期待感
【識者コラム】川井体制2年目の鳥栖、新チームに感じる期待感
筆者は2023シーズンに向けたJリーグのキャンプを沖縄で取材している。多くのチームがこの地で活動していることもあり当初、もう少し幅広く見ようというプランもあったが、最初に見たサガン鳥栖のインプレッションが良く、滞在中の半分近くを鳥栖の取材に費やすことになった。
就任2年目となる川井健太監督のメニューは非常にコンパクトで、2部練なら1つのセッションで1時間も経たずに終わってしまうこともある。その理由について川井監督は「その時間で十分だと思ってます。時間を短くしたいわけではなく、その量、その質があれば問題ないなと。だったら、そのほかの時間をプライベートにしてほしい。なぜなら、僕がそういうタイプの選手だったから」と笑顔で話す。
そうしたコンパクトなトレーニングの中でも、選手たちは非常に高い強度を出さなければいけないので、負荷は十分にかかっているという印象だ。宿舎内でのミーティングも少なく、時間も短いというなかで、1月21日に行われたベガルタ仙台とのトレーニングマッチ前日には、珍しく40分もの時間を割いてミーティングが行われた。その多くがセットプレーやスローインからのリスタートで、ミーティング後にはグラウンドで動きなどを確認していた。
「(ミーティング中)僕はコーヒーを飲んでただけ(笑)。選手が今すべて覚える必要はない。僕も覚えていないぐらいなので。ただ、MTGが40分ということは大切にしてるんだなと。それが伝わればいいです」
川井監督のそうした言い回しに取材で聞いている筆者も引き込まれてしまうが、鳥栖は実際かなりの分業体制ができており、トレーニングではほとんどコーチが具体的な指示を出し、川井監督はグラウンドを歩き回りながら、全体を観察することがほとんど。そこで必要だと思えば指示を出すが、余計な口出しはしない。
ただ、そこには大きな理由がある。川井体制が2年目となり、コーチングスタッフはもちろん、守護神の朴一圭をはじめ、昨シーズンから残っている選手たちがベースとなり、新加入選手たちの動きが指標になっているからだ。
鳥栖の設立に奔走した故・坂田道孝さんの命日であり、サポーターナンバーでもある17番を逆にした71番を背負う朴は「もともと主力で出ていた人たちがほとんど残って、監督が何したいか分かるなかでスタートして、プラス15人は監督が欲しいと言って呼んできた。順応度は早いと思います」と力強く語る。
「僕の感覚で言うと、2019年のマリノスに入ったタイミングの雰囲気を感じます。18年は分からないですけど、チームに入って石垣(キャンプ)に行った時に、なぜこれで残留争いしてたのという思いを抱いたのと似た感覚があります」
河治良幸
かわじ・よしゆき/東京都出身。「エル・ゴラッソ」創刊に携わり、日本代表を担当。著書は「サッカーの見方が180度変わる データ進化論」(ソル・メディア)など。NHK「ミラクルボディー」の「スペイン代表 世界最強の“天才脳”」を監修。タグマのウェブマガジン「サッカーの羅針盤」を運営。国内外で取材を続けながら、プレー分析を軸にサッカーの潮流を見守る。