日本サッカー飛躍の鍵は「誰もが認める選手」 ドイツ人指導者と考えるW杯攻略法「出現が待ち遠しい」
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日本人選手を称賛「技術、機敏さ、柔軟さ、規律正しい守備も素晴らしい」
日本ではPK戦の経験を積むために、代表戦や国内のトーナメントでPK戦を積極的に導入しようとする動きが出てきている。こうした取り組みはポジティブなものをもたらすのだろうか。
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「W杯のPK戦というものが持つ意味をコピーすることはできない。本来、プロ選手だったら誰だってPKでゴールを決めることはできるはずだ。だが、それをW杯のPK戦という状況でもできるのか、というのがテーマになる。これは頭の中の問題だ。(リオネル・)メッシレベルで最後の瞬間までGKの動きを見てシュートを打ってということができるなら、さまざまな取り組みが必要だろう。だが、そうでないなら、可能な限り正確に、可能な限り鋭くシュートを打つ練習を日頃からしていくことが大切ではないかと思う」
PK戦になった時の対処もそうだが、PK戦の前に勝負を決められるようになることがやはり重要になる。高いレベルでぎりぎりの緊張感が漂うなか、決定打となるゴールを奪うため、あるいは決定的なピンチに防ぐには何が必要なのか。
「W杯という舞台で上位進出を果たすためには、日本からワールドクラスの選手が出てくるかどうかがポイントになるだろう。日本にはすでに多くのインターナショナルレベルの選手が出てきている。だが、誰もが認めるトップレベルのワールドクラスの選手は? 日本人選手の技術、アスレティックのところは本当に素晴らしい。機敏さ、柔軟さ。戦術でも大きな成長が見られる。規律正しい守備も素晴らしい。
最後のところで、ほかを凌駕する選手の出現が待ち遠しいところだ。日本人選手が他国での挑戦を続けることはとても大事だね。多くの選手が欧州でプレーしているメリットは大きい。海外からの影響は必要だろう。別の文化に触れ合う、知り合う、そして順応することは成長するためにプラスに働く。『ゴールを絶対に決める』『絶対に守る』という確固たる意志を持つ選手が増えれば増えるほど、可能性は高まってくる。
学ぶということに関しては、僕らドイツ人もそうなんだ。いつでも学ばなければならない。そう、僕らも他国から学び続けることが大切なんだ。僕のクラブには日本人指導者が常にいる。彼らの規則正しさ、取り組みの丁寧さ、妥協なきやり通す勤勉さからは本当に多くのことが学べている。そうやって互いに好影響を与えながら、成長していけるのは素晴らしいと思っているよ」
(中野吉之伴 / Kichinosuke Nakano)
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中野吉之伴
なかの・きちのすけ/1977年生まれ。ドイツ・フライブルク在住のサッカー育成指導者。グラスルーツの育成エキスパートになるべく渡独し、ドイツサッカー協会公認A級ライセンス(UEFA-Aレベル)取得。SCフライブルクU-15で研修を積み、地域に密着したドイツのさまざまなクラブで20年以上の育成・指導者キャリアを持つ。育成・指導者関連の記事を多数執筆するほか、ブンデスリーガをはじめ周辺諸国で精力的に取材。著書に『ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする』(ナツメ社)、『世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)。