堂安所属フライブルク“4位躍進”の秘訣 選手から止まない称賛…「サッカー界最高の監督」の手腕とは?

日本代表MF堂安律が所属するフライブルク【写真:ロイター】
日本代表MF堂安律が所属するフライブルク【写真:ロイター】

【ドイツ発コラム】バイエルンに次ぐ2位フライブルク、注目を浴びるシュトライヒ監督

 現地時間1月20日から再開されたドイツ1部ブンデスリーガ。現時点で最もポジティブなパフォーマンスを見せているクラブは、日本代表MF堂安律が所属するフライブルクだろう。首位バイエルン・ミュンヘンと勝ち点差5の4位につけているだけでなく、チームとして非常にクオリティーの高いプレーが披露されている。

 フライブルクの試合を観戦に行くと嫌でも目を奪われるのがクリスティアン・シュトライヒ監督の存在だ。特にコロナ禍で無観客試合が余儀なくされていた頃は、監督の声がスタジアム中に響き渡っていた。

 選手が的確なポジショニングを取りながら、テンポ良くボールを動かす。相手を意図的に揺さぶり、連動した仕掛けで守備を攻略していく。不用意なクリアは好まれない。だがロングボールを使わないわけではない。プレーには意図がなければならないと常に口にするシュトライヒ監督。だから不用意なロングボールが続くと怒る。

「ロング(ボール)ばっかり蹴るな! つなげ! 動かせ!」

 そして、「プレーする」の意味を持つドイツ語「シュピーレン!」をいつでもピッチへ投げ掛ける。

 ボールを奪われるとすぐにプレスをかけてパスの選択肢を消していく。選手間の距離に気を配り、危険なゾーンをチームとして共有する。苦し紛れのパスを拾うと、すばやく攻撃へ転じる。互いにサポートしながら情熱的に戦う。

 ボールがコーチングゾーンに立つ自分の近くに転がってくると、すぐに走って拾い、味方に渡す。ボールボーイの役も進んで買って出る。

 サボりを一切許さない。ある試合で相手チームが左サイドでボールを持っている時、逆サイドで左ハーフのイタリア代表MFビンツェンツォ・グリフォとドイツ代表DFクリスティアン・ギュンターが大外へのケアをほんの少し怠ったシーンがあった。

 途端に大声ですぐに指示を飛ばすシュトライヒ監督と、瞬時にピクッと集中を取り戻す2人。次のプレーで相手のバックパスに対して守備ラインを素早く上げて見事な対応を見せると、監督は両手で大きな拍手をして守備陣を称える。

「ブラボー!!」

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中野吉之伴

なかの・きちのすけ/1977年生まれ。ドイツ・フライブルク在住のサッカー育成指導者。グラスルーツの育成エキスパートになるべく渡独し、ドイツサッカー協会公認A級ライセンス(UEFA-Aレベル)所得。SCフライブルクU-15で研修を積み、地域に密着したドイツのさまざまなサッカークラブで20年以上の育成・指導者キャリアを持つ。育成・指導者関連の記事を多数執筆するほか、ブンデスリーガをはじめ周辺諸国への現地取材を精力的に行っている。著書『ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする』(ナツメ社)、『世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)。

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