ブライトン三笘、躍動後に語った「見えすぎる」発言の真意 日本人アタッカーが抱く“究極のジレンマ”
【英国発コラム】太陽のように明るい監督から笑顔を消した三笘薫という主人公
イングランド1部リバプールを率いるユルゲン・クロップ監督から思い浮かべることができるのは、太陽のような明るい快活なキャラクターだ。そのきっかけは、クロップ監督を直撃し始めた2018年12月13日まで遡る。
当時、日本代表MF南野拓実が同クラブへ移籍するという噂が急速に真実味を帯び始めたことで旧練習場「メルウッド」へと足を運んだ。ところが、開かれた会見で筆者が質問をしようとするや否や監督担当のマット・マッカン広報官から「南野に関する質問には応じられない」と釘を刺されてしまった。
そんな状況で「さて、君は何のためにここに来たのかな?」と苦笑とともに茶目っ気たっぷりに語りかけてくるクロップ監督。そこで筆者は、「南野について聞けないということですが、あなたは(ボルシア・ドルトムント時代に)香川真司を育てた経験がある。その経験を通じて、日本人選手についてどのような印象を抱いたか、そこをお聞きしたい」と尋ねてみた。
からかったにもかかわらず懲りずに質問をしてきたことで、ドイツ人指揮官は「南野について聞けないなら、シンジ・カガワについて聞いてきた。気が利いているじゃないか! シンジについてなら喜んで話そう」と破顔一笑。最後には「君とはこれから何度も顔を合わせることになりそうだ」という言葉とともに、南野獲得に関する大ヒントをくれた。
あの時から3年あまり。アウェーとはいえブライトンに0-3という完敗を喫した直後のクロップ監督からは、あの会見で見られた表情が完全に消え去っていた。
筆者の顔を見つけると「やあ、久しぶり」とでも言うように小さく微笑んで頷き、黙礼してくれた。それがブライトン戦後にクロップ監督が見せた唯一の笑顔だったように思う。実際のところ、記者会見に臨んだ監督が絞り出す声はわずかに震えており、憔悴した内心を隠し切れずにいた。太陽のようなクロップ監督をここまで追い詰めたブライトンの主役の1人に、三笘薫の存在が挙げられるだろう。
森 昌利
もり・まさとし/1962年生まれ、福岡県出身。84年からフリーランスのライターとして活動し93年に渡英。当地で英国人女性と結婚後、定住した。ロンドン市内の出版社勤務を経て、98年から再びフリーランスに。01年、FW西澤明訓のボルトン加入をきっかけに報知新聞の英国通信員となり、プレミアリーグの取材を本格的に開始。英国人の視点を意識しながら、“サッカーの母国”イングランドの現状や魅力を日本に伝えている。