J2リーグ補強動向から見る「勢力図」 清水&磐田の“2強”ではない?…群雄割拠の新シーズンを占う

昨シーズン3位の岡山、前線のパンチ力はJ2随一の可能性

 しかしながら、清水と磐田が“2強”かというと決してそうではない。やはり昨シーズン3位の岡山はM・デュークこそ町田に移籍したが、ガンバ大阪からU-20日本代表FW坂本一彩が期限付き移籍で加入し、ジェフユナイテッド千葉からはパリ五輪の有力候補である大型FWの櫻川ソロモンも同じく期限付き移籍で加わった。昨季16得点のFWチアゴ・アウベスをはじめFWハン・イグォン、FW永井龍など、前線のパンチ力はJ2随一かもしれない。木山隆之監督はもともと守備の構築に定評のある指揮官なので、得点が昨年の61から70に乗ってくれば自動昇格の2位以内も見えてくる。

 そこに続くのが仙台と山形か。仙台は昨シーズン途中からチームを率いた伊藤監督が2年目となり、本格的に可変性の高いスタイルを仕込んで臨んでいくはず。イン&アウトを見ると昨季11得点のFW富樫敬真がサガン鳥栖に移籍した代わりに、2020年の1シーズン在籍したMF山田寛人がセレッソ大阪から帰ってきた。フィニッシュに課題はあるが、前線でポイントを作る能力はJ2で規格外のものがあり、伊藤監督の戦術に打ってつけだ。さらにヴィッセル神戸から大型MF郷家友太が加入。1つきっかけを掴めば3年半後の北中米W杯に向けて、A代表を狙えるタレントも少なくない。

 山形はピーター・クラモフスキー監督が3年目となり、いよいよ待ったなしのシーズン。MF山田康太という正真正銘の10番が柏レイソル、パリ五輪世代のホープであるDF半田陸がガンバ大阪へ引き抜かれたが、清水から実績抜群のFW後藤優介、昨年は岡山で主力を担ったサイドバックのDF成瀬竣平が名古屋から、横浜FCの昇格に貢献したDFイサカ・ゼインが川崎フロンターレから加入した。成瀬は五輪代表で半田に挑む存在という構図も興味深い。レノファ山口FCで中盤の主力を担ったMF田中渉はボランチもこなすが、山田にも代わり得る攻撃のタレントだ。

 この2チームに続くのは下平隆宏監督が2年目となる大分トリニータか。中盤の軸だったMF下田北斗がライバルの町田に、後方からゲームを作る存在だったDF三竿雄斗が京都サンガF.C.に移籍するなど、いくつか“穴”になりうる移籍もあったが、MF茂平(←ブラウブリッツ秋田)、MF池田廉(←FC琉球)など、言ってみれば”玄人好み”の実力者が入り、下平監督のスタイルにフィットした現有戦力を含めて、スタイリッシュな陣容になった。

 前線ではFW高澤優也(→町田)、FW呉屋大翔(千葉)が抜けたなかで、昨年の62得点を上回る得点力を出せるかは気になるが、22歳のブラジル人FWサムエルのさらなる成長や昨季23試合で8得点のFW長沢駿がフルシーズン稼働できれば、最低でもプレーオフには食い込んでくる力はある。

page1 page2 page3

河治良幸

かわじ・よしゆき/東京都出身。「エル・ゴラッソ」創刊に携わり、日本代表を担当。著書は「サッカーの見方が180度変わる データ進化論」(ソル・メディア)など。NHK「ミラクルボディー」の「スペイン代表 世界最強の“天才脳”」を監修。タグマのウェブマガジン「サッカーの羅針盤」を運営。国内外で取材を続けながら、プレー分析を軸にサッカーの潮流を見守る。

今、あなたにオススメ

トレンド

ランキング