世界一のW杯と日本一の高校選手権、頂点を狙うなら「味方につけることが不可欠」な共通項とは?
男女の日本代表がともにPK戦で苦い思い、サポート体制は見直すべきだ
実は日本代表がPK戦で苦い思いをしたのは、年末のW杯だけではなかった。年始に行われた女子アジアカップ準決勝では、内容で上回りながら中国に粘られPK戦に持ち込まれた。ただしもし事前に中国のGKの分析ができていれば、日本に負ける要素はなかった。中国のGKズー・ユーは、あまりに早く身体を倒してしまうので、その動きを見極めてから蹴れば「後出しじゃんけん」のように簡単に成功が見込めた。1人目の熊谷紗希は失敗したが、2~4人目の長谷川唯、清水梨紗、長野風花は、GKの癖を見極めたようで冷静に逆を突いて決めた。ところが5人目の南萌華は、それに気づかずGKが倒れたところに蹴ってしまう。もちろん男子に比べれば女子の情報収集は難しいのかもしれないが、あまりに残念な敗戦だった。
森保一監督は、クロアチアにPK戦負けを喫したあとに「東京五輪のニュージーランド戦でも同じ方法で勝った」と語った。しかし逆に、もし地元開催の五輪でニュージーランドにPK負けをしていたら、この体制はW杯まで存続できていただろうか。
結局日本は、男女ともに周到な準備を怠り、4年に1度の重要なトーナメントで相次ぎPK戦負けを喫した。少なくともフル代表チームへのサポート体制くらいは、早急に見直すべきだと思う。
(加部 究 / Kiwamu Kabe)
加部 究
かべ・きわむ/1958年生まれ。大学卒業後、スポーツ新聞社に勤めるが86年メキシコW杯を観戦するために3年で退社。その後フリーランスのスポーツライターに転身し、W杯は7回現地取材した。育成年代にも造詣が深く、多くの指導者と親交が深い。指導者、選手ら約150人にロングインタビューを実施。長男は元Jリーガーの加部未蘭。最近選手主体のボトムアップ方式で部活に取り組む堀越高校サッカー部のノンフィクション『毎日の部活が高校生活一番の宝物』(竹書房)を上梓。『日本サッカー戦記~青銅の時代から新世紀へ』『サッカー通訳戦記』『それでも「美談」になる高校サッカーの非常識』(いずれもカンゼン)、『大和魂のモダンサッカー』『サッカー移民』(ともに双葉社)、『祝祭』(小学館文庫)など著書多数。