東山監督、涙声で無念吐露「球を動かす時に…」 選手権V逸後の会見で唯一挙げた敗因
選手権決勝で岡山学芸館(岡山)に1-3敗戦、京都勢として55年ぶり日本一に到達ならず
第101回全国高校サッカー選手権大会は1月9日、東京・国立競技場で初めてファイナルに進出したチーム同士の決勝が行われ、東山(京都)は岡山学芸館(岡山)に1-3で敗れ初優勝を逃した。京都勢としても1967年度の第46回大会で、山陽(広島)と優勝を分け合った洛北以来、55年ぶりの高校日本一に到達できなかった。
会見場に現れた福重良一監督の表情は硬かった。冒頭から涙声で話し始め、時折鼻をすする様子に無念の思いが伝わってきた。試合内容や敗因についてはなかなか語ろうとせず、選手の特に3年生への素直な気持ちをこう述べた。
「3年生はコロナ禍で十分な学校生活ができなかった。入学式は開けず修学旅行にも行けなかった」
「3年生にとっては最後の、全国選手権と都道府県大会を開催していただいたことに感謝している」
「力が足りず内容も良くなかったが、1試合1試合成長してくれた。胸を張ってやってくれた」
たまに声を詰まらせながら、前回大会のチーム最高成績であるベスト8を一気に超え、準優勝したイレブンに精いっぱいの感謝の気持ちを伝えた。
ともに2年連続5度目の出場で初の頂点を狙う私学勢による最終決戦、国立競技場には約5万1000人の大観衆が集まった。
東山は不運な形で先制を許した。前半25分、自陣左からのクロスに主将のセンターバック新谷陸斗が処理を誤り、痛恨のオウンゴールとなった。名手は珍しいミスに「試合へは良い形で入れたのですが、自分のオウンゴールで少し悪い雰囲気になってしまった」と残念そうに失点場面を振り返った。
しかし1回戦からの5試合で13得点してきた攻撃力が、失点直後からフル稼働。前半27分に左サイドバック仲里勇真が、左からの鋭いクロスで敵陣を襲うと、1分後にはボランチ真田蓮司が左から惜しい一撃を浴びせた。
そうして願ってもない時間帯に同点にする。1分のアディショナルタイムに入ろうとした前半44分、FW北村圭司朗の左からの短いパスを預かった真田が、抑えの利いた右足シュート。バーに当たってゴールインした。「北村がいいボールをくれました。いつもは入らないのに、国立の大舞台で決められて自分でもびっくりしています。毎日シュート練習している成果が出た」と説明したものの、優勝を逃してさすがに表情は硬く、言葉にも張りがなかった。
河野 正
1960年生まれ、埼玉県出身。埼玉新聞運動部で日本リーグの三菱時代から浦和レッズを担当。2007年にフリーランスとなり、主に埼玉県内のサッカーを中心に取材。主な著書に『浦和レッズ赤き激闘の記憶』(河出書房新社)『山田暢久火の玉ボーイ』(ベースボール・マガジン社)『浦和レッズ不滅の名語録』(朝日新聞出版)などがある。