「高校日本一に弾み」 初優勝へ“あと1勝”の東山イレブンが自信「狙いにいきます」

PK戦を制した東山が決勝に進出【写真:徳原隆元】
PK戦を制した東山が決勝に進出【写真:徳原隆元】

大津とのPK戦を制して東山が決勝進出、GK佐藤瑞起が2本ストップで存在感

 第101回全国高校サッカー選手権大会は1月7日、東京・国立競技場で準決勝2試合が行われ、第2試合は初めてベスト4に進んだ東山(京都)が、前回大会準優勝の大津(熊本)に1-1からのペナルティーキック(PK)戦を4-2で制した。1月9日の決勝でともに初優勝を懸けて岡山学芸館(岡山)と激突する。

 両チームとも4-4-2の陣形を敷き、東山はセレッソ大阪への加入が内定している右サイドMF阪田澪哉とボランチの真田蓮司が攻撃のタクトを振るい、大津は右サイドMF田原瑠衣と出場停止の明けたボランチ浅野力愛が、正しい展開の読みとスピード豊かな外からの攻めで互いにやり合う展開に終始した。

 準決勝から45分ハーフでの戦いに変わった。前半の決定的な得点機は東山に分があり、34分に阪田の左クロスからFW豊嶋蓮央が頭で合わせたが、わずかに右に外れた。41分にはFW北村圭司朗のパスをフリーの右サイドバック石井亜錬が打ったが、これも左に流れ、43分の真田の左クロスから石井が放ったヘディングシュートも右に逸れていった。

 やや押され気味だった大津が前半39分に先手を取った。主将のFW小林俊瑛が左のスペースへ好パスを配給、左サイドMF香山太良の左からのグラウンダーのパスをボランチ井伊虎太郎が右足ダイレクトで流し込んだ。

 1点リードされた東山・福重良一監督はハーフタイムに「1人1人が上手くいっていなかったので、まず心の整理をしました。サイドから失点したので、そこの修正もしました」とアドバイスの一端を明かすと、「サイドでやられたので、サイドで(1点)返そうと思った」となんとも強気な、負けず嫌いを想像させる言葉を選手に送っていた。

 その思いは叶わなかったが、セットプレーから同点にする。後半18分、左利きの左サイドバック仲里勇真の蹴った右コーナーキックを大津がクリア。ボランチの松橋啓太がこぼれ球を上手にトラップしてから豪快な右足シュートを突き刺した。

 左右のロングスローに、相手のパスコース封じに、真田との配給役に、同点ゴール……。八面六臂の役回りをこなした松橋は、「高いボールが来たのでダイレクトで狙おうとしたのですが、難しいと判断しました。トラップした時は前のスペースが大きく見え、(シュートするまで)まるでスローモーションのようでした」と今大会の初ゴールの模様をこんな表現を使って喜んだ。
 
 1-1のままPK戦に突入。東山は準々決勝に続いて2度目、大津は3度目のPK戦だ。東山の守護神・佐藤瑞起は日体大柏(千葉)との準々決勝でも1本を止めているが、準決勝でも相手の2人目と4人目のキックを弾き飛ばし、またまた4-2の勝利に貢献した。

 阪田は感謝した。「瑞起はチームのムードメーカーなんです。練習でも試合でもよく声を掛けてくれて盛り上げてくれる。本当、ありがとうと言いたい。これで目標の高校日本一に弾みがつきました」

 開会式で選手宣誓の大役を担った主将のセンターバック新谷陸斗は、国立競技場に戻ってきてまず1勝を挙げ、さらにもう1勝して集大成の戦いを締めくくると言う。

 力強かった。「瑞起のおかげで目標にまた近づいた。あいつとはセレッソ大阪U-15から6年間一緒にやってきて信頼関係も抜群です。あと1つですね、狙いにいきます。日本一になります」。新春、東京から古都に朗報を届けるつもりだ。

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河野 正

1960年生まれ、埼玉県出身。埼玉新聞運動部で日本リーグの三菱時代から浦和レッズを担当。2007年にフリーランスとなり、主に埼玉県内のサッカーを中心に取材。主な著書に『浦和レッズ赤き激闘の記憶』(河出書房新社)『山田暢久火の玉ボーイ』(ベースボール・マガジン社)『浦和レッズ不滅の名語録』(朝日新聞出版)などがある。

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