Jリーグ注目の「古巣」復帰組 柿谷、昌子、宮代…23年シーズンの飛躍期す“出戻り移籍”プレーヤー8選
新潟&京都での武者修行を経た荻原は浦和へ帰還
■昌子 源(DF/J1鹿島アントラーズ←J1ガンバ大阪)
Jリーグ、天皇杯、ルヴァン杯(旧ナビスコ杯)、ACL(AFCチャンピオンズリーグ)というすべてのメジャータイトルを獲得し、2度のクラブ・ワールドカップ(W杯)を経験。2018年にはロシアW杯でセンターバックのレギュラーとしてベスト16に貢献した。フランスのトゥールーズで負傷した足首の負傷に悩まされ、国内復帰となったG大阪でも本来の姿を取り戻したとは言い難い。それでもリーダーシップと統率力を発揮して、昨年はJ2降格の危機に瀕したチームのJ1残留を支えた。かつての鹿島でバックラインを組んだDF植田直通も欧州から戻る形で、賛否両論はある。しかし、岩政大樹監督も鹿島のスピリットを知る昌子の影響力に期待を寄せ、元に戻るのではなく、一緒に新しい鹿島を作っていく同志として見ている。
■荻原拓也(DF/J1浦和レッズ←J1京都サンガF.C.)
アルビレックス新潟と京都で、2年半の武者修行を経て、ジュニアユースから過ごした浦和へ帰ってきた。もともと左サイドでボールを持って前を向けば、非凡な突破力を発揮していた。現・FC東京のアルベル・プッチ・オルトネダ監督が率いていた新潟ではビルドアップを学び、曺貴裁監督が率いる京都ではJ1昇格を支えながら、2年間で攻守両面のハードワークに磨きをかけた。浦和を離れた当初は悔しい気持ちに満ち溢れていたというが、さらに“浦和愛”が強くなったという気鋭のレフトバックは武者修行先で得た経験を生かし、試合に出て活躍するだけでなく、結果に責任を持てる存在になることを誓っている。
■鈴木海音(DF/J2ジュビロ磐田←J2栃木SC)
パリ五輪世代の主力として期待が懸かるセンターバックは栃木で大きく成長した。持ち前の対人能力に加えてカバーリング、さらに課題だったビルドアップで受け身にならず、自分からボールを呼び込んで、チャンスの起点になる意識が強まった。パリ五輪に向けた代表レベルでの競争を考えれば、J1にこだわる選択もあったかもしれない。しかし、ジュニアユースから育った地元クラブで本当の中心選手になり、J1昇格に導く活躍を見せた先に、その道もつながっていると確信しているだろう。森保ジャパンのコーチとしてカタール・ワールドカップのベスト16を支えた横内展昭監督のもとで“磐田発パリ行き”を果たせるか。
■藤尾翔太(FW/J1セレッソ大阪←J2徳島ヴォルティス)
正真正銘のストライカーが、アカデミーから昇格したセレッソに帰ってきた。2021年の夏に移籍した水戸ホーリーホックで8得点、昨シーズンは徳島で10得点をマーク。J2ながら1年半で18得点を叩き出している。しかも水戸と徳島ではサッカーのスタイルが全く異なり、いかなる戦術、組み合わせにもフィットできる柔軟性と落ち着きが大きな武器になっている。端正なルックスにサラサラヘア、笑顔やしぐさから「皇子」の愛称で知られるが、ピッチでは力強く、アクロバティックだ。ボックス内で好パスを受けさえすれば、浮き球でもグラウンダーでも、鮮やかにゴールネットを揺らす。満を辞して臨むJ1での活躍次第で、パリ五輪でのエース座も見えてくる。
河治良幸
かわじ・よしゆき/東京都出身。「エル・ゴラッソ」創刊に携わり、日本代表を担当。著書は「サッカーの見方が180度変わる データ進化論」(ソル・メディア)など。NHK「ミラクルボディー」の「スペイン代表 世界最強の“天才脳”」を監修。タグマのウェブマガジン「サッカーの羅針盤」を運営。国内外で取材を続けながら、プレー分析を軸にサッカーの潮流を見守る。