「今まで見たことがない」 イングランド代表名手が明かすブライトン三笘のリアル評

チームメイトと監督からの信頼を掴んだ今、2桁ゴールも夢ではない

 ララーナの言葉を聞くと、“プレミア1年生”にもかかわらずエバートン戦で三笘にしっかりとボールが集まっていた状況に納得ができた。超一流の経歴を持ち、34歳となった今も卓越した技術を持ってブライトンで輝くララーナがここまで認めるのだ。

 チーム内で能力が認知され、「あいつにボールを渡せばなんとかしてくれる」という信頼を築き上げた三笘の姿を容易に想像できる。思い返せばこの試合、ロベルト・デ・ゼルビ監督もテクニカルエリアから左サイドに開いてフリーだった三笘を指差し、「ここにボールを出せ!」と何度も指示していた。

 今季プレミア17試合目にして先発の座をがっちりと掴み取ったように思える三笘。本人も「世界最高レベル」との呼び声も高い同リーグで通用するという手応えをしっかり感じているようだ。

「自分にしかない特徴があると思うので、そこを出していけば(さらに伸びる)可能性はある。自分の良さは分かっているので。そこを毎日突き詰めて行くしかないと思う」

 またエバートン戦で今季先発は5試合目。そのなかで3ゴールを決めたことについて尋ねたところ、「悪くはないと思う」と一言。一方で、「でももっと決められるチャンスはありましたし、もっと集中するべきだと思います」と続けて、さらなるゴール量産を誓った。

 プレミアリーグにおいて日本人選手が1シーズンに挙げたゴールの最高記録は、2012-13シーズンに当時マンチェスター・ユナイテッド所属の香川真司による「6」。これは今も破られていない。

 しかし、ララーナにその実力を認められ監督も決定力に惚れ込んでいる今なら、三笘が残り21試合で日本屈指の“10番”を越えるのではと期待できる。もちろん大きな怪我をしないことは条件だが、2桁ゴールにだって手が届くかもしれない。

 こうして観る側の夢が膨らむ状況であっても、三笘は現状を良しとしない。先制点を奪いチームのアウェー戦勝利にたしかな貢献をした試合直後でさえ、反省を口にする。この時は、プレミア特有である年末年始の過密日程により万全とは言えなかったフィットネスを課題に挙げた。

「うーん、思ったより前半は動けなかった。もうちょっと、違うアプローチができたらと思いました。しかし、まず(試合に)出ることに意味がある。出た時に勝つことで、チャンスがもらえる。だからこれを続けていきたいと思います」

 三笘はここまで、リーグ戦だとボーンマスとクリスタル・パレスを除く17チームと対戦している。プレミアのサッカーについて「強度がやはり高い」と指摘したうえで、「その強度を受けた時に、守備も含めてやっぱりもっともっと、自分の強さを高めていかないといけない。まだまだやることは多いという感じです」と続けて、まずはフィジカル向上の必要性を強調する。ただ、追及しているのはフィットネスやフィジカルだけではないようだ。

「コンディションがぶれなくなってきていますけど、自分の中ではまだまだ隙があるというところがある。日程は過密ですが、その中でもどんどん(コンディションを)上げているというのが必要だと感じる。それにプレミアに来た当初と同じくらいの“熱量”も維持していかないといけない思っている」

 向上心を保つのはもちろんのこと、ブライトンに加入した当初の“初心”も忘れてはならない――。三笘はそうやって成長の青写真を描いていた。

(森 昌利 / Masatoshi Mori)

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森 昌利

もり・まさとし/1962年生まれ、福岡県出身。84年からフリーランスのライターとして活動し93年に渡英。当地で英国人女性と結婚後、定住した。ロンドン市内の出版社勤務を経て、98年から再びフリーランスに。01年、FW西澤明訓のボルトン加入をきっかけに報知新聞の英国通信員となり、プレミアリーグの取材を本格的に開始。英国人の視点を意識しながら、“サッカーの母国”イングランドの現状や魅力を日本に伝えている。

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