コーナーキックから生まれた見事なパスワーク 岡山学芸館が見せた“トリックプレー”の裏話とは?

岡山学芸館のトリックプレーに反響【写真:徳原隆元】
岡山学芸館のトリックプレーに反響【写真:徳原隆元】

右サイドでショートコーナーをつなぎ、最後はこぼれ球を押し込み追加点

 1月4日に行われた第101回全国高校サッカー選手権大会準々決勝、佐野日大(栃木)を4-0で下した岡山学芸館(岡山)が見事なトリックプレーで試合の流れを手繰り寄せた。

 岡山学芸館は前半をMF田口裕真の先制点により1-0で折り返し、迎えた後半13分のコーナーキック(CK)の場面でトリックプレーを見せる。ショートコーナーをつないだMF岡本温叶、MF山田蒼コンビから田口にパスが通る。佐野日大の守備陣を切り裂く見事なパスワークは、その田口から山田へのスルーパスで完結。山田のシュートはGK平岡倖輝に阻まれてしまうが、このこぼれ球をFW今井拓人が蹴り込んで点差を2点に広げた。

CKキッカー担当のだった岡本が振り返る。

「あれはずっと練習してて。まだ出せてなかったんですけど、今日は出せました」

 このプレーは、実は去年の2月から温め続けてきたものだったとMF山田蒼も明かす。岡本からのショートパスを引き出してスイッチを入れた当事者だ。

「あれは新チームの新人戦前なので、もう(2022年)2月ぐらいから。でも今まで(ほとんど)使ったことなくて」

 実際に使ったのは練習試合で1回とインターハイで1回だったと話す山田は「練習ではずっと取り入れていて新人戦前、全国前とかで、いつやってもいいという状況でした。ただ、なかなか使おうと思えるシーンがないというか。温め続けていて、で、今日そういうなかでできました」とホッとした表情を見せる。

 ちなみに山田によればトリック発動のポイントは2つあったという。1つ目はコーナーエリアの岡本の脇に立つ山田自身に何人のマーカーが付くのか。

「一応、タイミングがあれば今大会もやろうと思っていて。初戦からたまに、僕(山田)が寄っていくシーンが何回かあったんですけど。その時にディフェンスが2枚釣り出されたら、もうやらないって決めていて。今日は1枚しか釣り出されなくて」とまずは1つ目の条件をクリア。続く条件がゴール正面に立つ田口の状態だったと言う。山田が続ける。

「なおかつ(山田自身に)ラストパスを出した(田口)裕真がフリーだったので。これはやるしかないなということで、状況は揃いました」

 この追加点で一気に楽になった岡山学芸館は、同32分に交代出場のMF木下瑠己のファーストタッチゴールで3点目を奪うと、同アディショナルタイム4分にはFW田邉望がペナルティーキック(PK)を決めて4-0で勝利。目標にしていたというチーム史上初のベスト4入りを決めた。

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江藤高志

えとう・たかし/大分県出身。サッカーライター特異地の中津市に生まれ育つ。1999年のコパ・アメリカ、パラグアイ大会観戦を機にサッカーライターに転身。当時、大分トリニータを率いていた石崎信弘氏の新天地である川崎フロンターレの取材を2001年のシーズン途中から開始した。その後、04年にJ’s GOALの川崎担当記者に就任。15年からはフロンターレ専門Webマガジンの『川崎フットボールアディクト』を開設し、編集長として運営を続けている。

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