「この大会で違いを見せないとプロで…」 C大阪内定の神村学園MF大迫塁が抱く危機感と覚悟

神村学園MF大迫塁【写真:徳原隆元】
神村学園MF大迫塁【写真:徳原隆元】

神村学園が前回王者の青森山田に2-1勝利、視野の広さを発揮したMF 大迫塁が存在感

 第101回全国高校サッカー選手権は1月4日に各地で準々決勝が行われ、神村学園(鹿児島)が前回王者の青森山田(青森)に2-1で勝利。神村学園の主将、卒業後のセレッソ大阪入りが内定しているMF大迫塁は随所に視野の広さを見せた。

 大迫の仕掛けはキックオフのファーストプレーから始まった。通常なら最終ライン方向へ下げていくのが定番のプレーで、いきなりドリブルをスタート。卒業後のドイツ1部ボルシアMG入りが内定しているFW福田師王とのコンビプレーで打開を図った。その突破は成功しなかったが、狙いは「青森山田は前線から強烈なプレスを掛けてくるので、逆に下げないで相手をうしろ向きにプレーさせようと思った」というもの。こうした駆け引きも交えながら、試合の中で存在感を見せていった。

 1点ビハインドのハーフタイムとなったが、栢野裕一監督代行は「劣勢のゲームでも粘り強く戦えている。積み上げの成果が出てきている」と話す。昨年12月の高円宮プレミアリーグ参入プレーオフや、今大会初戦となった2回戦の山梨学院(山梨)戦での逆転勝利が自信につながっていると手応えも感じているとして、「なかなか自分たちの狙いどおりに展開できなくても、粘り強く試合を運んできたのは今大会での成長だと思う」と話した。

 それでも後半の立ち上がりは青森山田の圧力を受けてしまう時間から始まった。リズムの悪さが顕著だった後半16分、青森山田の攻撃が終わって神村学園のゴールキックで再開となった場面で、大迫は一気に自陣ペナルティーエリア内まで下がってGKからショートパスを受けた。「自分から神村の攻撃が始まるので、自分がボールを触ってリズムを作れたらチャンスにつながると。自分が触ることで何かが起こせる感覚がある。みんなは急いでしまう場面かもしれないけど、慌てずにできる。そこまでプレッシャーに来るなら、ドリブルで抜いてやろうくらいの気持ちだった」という精神的な余裕を背景にしたプレーが、展開を変えた。

 ボールを預かり前を向いた大迫は、引き出される青森山田を見るや最前線に鋭いフィードを送り、福田が相手を抑え込みながら胸でキープ。そこでFW西丸道人がサポートしてきて同点ゴールを奪った。その4分後には逆転ゴールも奪う神村学園だが、大迫はコーナーキックの際に観客をあおって声援や拍手を引き出すようなアクションも見せ、「等々力を神村学園の雰囲気にしてやろうと思った」と、スタジアムの空気感まで味方につけようとした。そして試合後には「3年生で、メンバーに入りたくても入れなかった選手もいるから」と、真っ先に応援席へと駆け寄った。

 卒業後にJ1のC大阪へ加入するだけに「この大会で違いを見せないとプロで1年目からは出られない。残り2試合、大迫塁の価値を示していきたい」と宣言。神村学園は体調不良で静養していた有村圭一郎監督も1月7日国立競技場で行われる準決勝から合流の見込み。大迫は「100%の状態で臨める。残り2日、しっかり準備したい」と、岡山学芸館(岡山)との対戦を見据えていた。

(轡田哲朗 / Tetsuro Kutsuwada)



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