川崎入り内定の履正社アタッカーは「物足りない」 最後の選手権で指揮官が投げかけた言葉
履正社MF名願斗哉、チームを8強へ導けず“最後の選手権”が幕を閉じる
履正社(大阪)のMF名願斗哉はPK戦による敗戦について「ただただ、悔しいしかないです」と言葉少なに語った。
優勝候補と目されていた履正社は1月2日に行われた第101回全国高校サッカー選手権大会3回戦で佐野日大(栃木)と対戦。先制を許す展開のなか、名願自らが同点ゴールを決めたが逆転ゴールまでは奪えず、PK戦で4-5と敗戦していた。
名願は「今日のプレーで言うとロングスローから失点したということ。それぐらいしかシュートを打たれていないので、その1点でやられた。1点をなかなか取り切れず、PKまで行ってしまったということです」と敗因を分析。佐野日大の堅守については「どこに行っても人が多いので、ドリブルもできないですし、パスもなかなか難しいので、どうやって攻めようか」と振り返り、打開力を欠いたことを猛省した。
そのなかで、履正社のこの試合唯一のゴールは名願が決めた。相手選手を外す技巧的なボールコントロールから生まれたものだった。
「キックフェイントしてあげようと思ったんですが、ディフェンスとの距離があって、ゴールも見えたので。シュートを打ったら入ったという感じです」
名願はPK戦では5人目のキッカーとして登場し成功。GKジョン・カミィ・信バーに最後を託した。
「夏(インターハイ3回戦・湘南工大附属戦のPK戦)は自分が外して負けてるので。(今回はPKを)決めれて良かったんですけど。GKに託すしかない状況を経験できて良かった」
高校卒業後は、加入が内定しているJ1川崎フロンターレでプロデビューを目指す。将来は日本代表に入ってワールドカップで優勝するという夢があるので。そこに向けてまず、1年目から開幕スタメンで出られるように頑張りたいです」と、18歳は堂々と語った。
履正社の平野直樹監督は名願について活躍を褒めつつも、あくまでも選手権は年齢制限のある大会での活躍だとの前提で物足りなさも口にしていた。
「マークが厳しいなかで点を取るというのは、彼の持っている1つの才能なのかなと。ただ、あくまでも今の年代というのは、18歳から16歳の年齢の制限があっての大会。彼はそれを飛び越して行かなきゃいけないと考えると、物足りないと言えば物足りない。マークが付いていてもやらなきゃいけないし、もっともっとタフにやっていってもらいたい」
そう厳しい言葉を投げかけつつ、最後は教え子にエールを送っていた。
「あっという間に1月に入っているので、1週間もしないうちに彼が次に行こうとしているチームも始動するんじゃないのかな。もうそこは切り替えてやってもらわないと。まだまだ先を見てやってもらわないといけない選手なので」
川崎の始動日は1月9日。その後沖縄合宿を経てシーズンがスタートする。開幕戦は2月17日の昨季リーグ王者・横浜F・マリノス戦となる。短期間にかなりのアピールが必要となるが、名願のこれからを見守りたい。
(江藤高志 / Takashi Eto)
江藤高志
えとう・たかし/大分県出身。サッカーライター特異地の中津市に生まれ育つ。1999年のコパ・アメリカ、パラグアイ大会観戦を機にサッカーライターに転身。当時、大分トリニータを率いていた石崎信弘氏の新天地である川崎フロンターレの取材を2001年のシーズン途中から開始した。その後、04年にJ’s GOALの川崎担当記者に就任。15年からはフロンターレ専門Webマガジンの『川崎フットボールアディクト』を開設し、編集長として運営を続けている。