「スタメンを取れなくて…」 青森山田に現れた“ヒーロー”、独特ルーティンで躍動した背番号「1」
後半終了間際に投入、GK鈴木将永がPK戦で2本ストップしてチームを勝利に
第101回全国高校サッカー選手権は1月2日に各地で3回戦の試合が行われ、前回王者の青森山田(青森)はPK戦の末に国見(長崎)に勝利した。青森山田は同点の後半終了間際にGK鈴木将永が投入され、PK戦で2本ストップしてチームを勝利に導いた。
青森山田は前半アディショナルタイムに先制するも、後半に追い付かれて1-1の同点で試合の残り時間が少なくなった。アディショナルタイムも近づくなかで、ベンチでは背番号「1」が呼ばれた。明らかにPK戦を見据えた交代が行われ、そのまま同点で後半を終了。その舞台で鈴木が躍動した。
手を「パン!パン!」と2つ叩き、レフェリーがホイッスルを吹くと「来い!」と声を発するのがルーティンに見えるGKは、そのリズムに相手を引き込むようにして2本目と4本目をセーブした。青森山田は4人全員が決めてPK戦のスコア4-2で勝ち上がった。
その鈴木は9月上旬に負傷があり11月中旬の復帰だったことを明かした。そして「スタメンを取れなくて、どうにかして試合に出て自分の名前や価値を上げていこうと思っていて、PK戦ならPK戦で出ても良いので自分のやるべきことをできるようにと思っていた」という思いがあったと話す。
そして国見は3試合連続のPK戦だったが、「前回の国見の選手がどちらに蹴っていたとか、そういう情報も変に考えすぎると上手くいかないと思っていたので、自分の感覚を信じようと思った。PK戦は得意だし、春からやってきたなかで止めてきていた自信もあった」という言葉も残した。
今年のカタール・ワールドカップ(W杯)では日本代表が決勝トーナメント1回戦でクロアチア代表にPK戦で敗れたことや、決勝戦のアルゼンチン代表とフランス代表の試合がPK戦で決着したこともありPK戦がクローズアップされた。その歴史のなかでは、2014年ブラジルW杯の準々決勝コスタリカ戦で延長後半に投入されてPK戦の勝利に導いた当時のオランダ代表GKティム・クルルがヒーローの座を手にしたこともあった。それだけ、キッカーの落ち着きや技術だけでなくGKのPKストップ技術もまたトーナメントでは最後の最後に違いを作ることがある。
高校サッカー選手権では、1回戦から準決勝までは後半終了時に同点ならばPK戦で勝ち上がりが決められる。過去にも多くのドラマを生み、涙もヒーローも生み出してきた。青森山田の背番号「1」は、連覇を目指す道のりの中で確かにその力を発揮し、ヒーローの1人に名を連ねた。
(轡田哲朗 / Tetsuro Kutsuwada)