神村学園に6年前から伝わる伝統 “ここ一番”で主将MFがGKにキャプテンマークを託した訳
PK戦の末に神村学園が日大藤沢に勝利 大迫塁から広川豪琉に渡されたキャプテンマーク
第101回全国高校サッカー選手権は1月2日に各地で3回戦の試合が行われ、等々力陸上競技場の第1試合ではペナルティーキック(PK)戦の末に神村学園(鹿児島)が日大藤沢(神奈川)に勝利した。そのPK戦には、神村学園に6年前から伝わる伝統があった。
卒業後のボルシアMG入りが内定しているFW福田師王、セレッソ大阪入りが内定しているMF大迫塁を擁することからも、神村学園は開幕前から注目度が高かった。一方の日大藤沢も、清水エスパルス入りが内定している198センチの長身FW森重陽介を擁し、地元会場で大きな声援を受けながら勝ち上がってきていた。その試合は一進一退の展開のなか、神村学園は先制点を許すも同点ゴールを奪い1-1で前後半の80分間が終了し、決着はPK戦に持ち越された。
先攻の神村学園は1本目を大迫が決めた。選手間でPKの順番を決めるなかで中心にいる主将の大迫は「ずっと1番に蹴っている。緊張すると思うし、楽にさせてあげたい」と、自分が確実に決めるという自信と同時にチームメイトへの思いを語る。PKを決めた大迫はGK広川豪琉にキャプテンマークを託した。それは、6年前の鹿児島県予選の決勝で先輩たちがそうしていた姿を、当時に中等部の1年生として見ていたからこそ。今や、神村学園の伝統になっている。
大迫が「PK戦はGKが主役だし、(キャプテンマークを受け取れば)気持ちが高まると思う。『こいつ、止めるな』と思った」と話せば、広川も「昨日の夜に、もしかしたらPK戦になることもあるかもしれないと思っていた。相手を自分のゾーンに引き込むようにして、あのGKが止めそうだという雰囲気を会場にも伝わるように出していきたかった」と話す。後攻の日大藤沢の1本目を見事にストップ。神村学園は全員が決めての勝ち上がりになった。
攻撃陣に注目の集まる神村学園だがGK広川が見事にPK戦の主役になり、チームメイトもそれを信じた。準々決勝では前回優勝校の青森山田(青森)と対戦するが、大会屈指の注目カードがどのようなハイレベルな戦いを見せるのか期待される。
(轡田哲朗 / Tetsuro Kutsuwada)