エースFW&主将らが躍動、前橋育英の6発大勝が示した底力 優勝候補・昌平との3回戦へ監督も気概「やり合う展開になる」

3回戦に進出した前橋育英高校【写真:徳原隆元】
3回戦に進出した前橋育英高校【写真:徳原隆元】

四学香川西を6-1で圧倒

 第101回全国高校サッカー選手権大会は12月31日に3日目を迎えた。首都圏8会場で3回戦16試合が行われ、NACK5スタジアムの第2試合では今夏の全国高校総体(インターハイ)王者の前橋育英(群馬)が四学香川西(香川)を6-1で圧倒し、順当に3回戦に進出。優勝候補の昌平(埼玉)と激突することになった。

 前半は相手のシュートを1本に抑えたなか、同24分に前橋育英はエースFW高足善が2試合連続ゴールをものにするなど、8本のシュートを打っていた。

 ところが老練の山田耕介監督は前半の内容におかんむり。「(相手守備ラインの)背後への動き出しがなかったし、横パス、横パスばかりで縦に入れる回数がなかった。反省点ばかりの前半ですよ」と先制点を奪ったものの、不満の募る内容だったことを明かした。

 ハーフタイムには出来の悪かった攻撃面を修正することを指示し、後半を迎えた。

 インターハイを制した面々は戦術理解度、課題を修復する力がある。後半2分、長年主力を務める主将のボランチ徳永涼が左のFW山本颯太に良質のロングパスを送ると、左足でゴール右に決めた。

 後半16分にMF大久保帆人の左からのクロスをMF小池直矢がヘディングで押し込み、同28分には山本がこの日2点目をゲット。さらに猛攻は続き、同34分に小池もヘッドで2点目を挙げ、この6分後に途中出場のMF堀川直人が、MF眞玉橋宏亮のスルーパスから6点目を奪って大勝した。

 前橋育英は日章学園(宮崎)との1回戦でベンチスタートだった山本は、後半18分から出場していたが、1本のシュートも打てていなかった。

 しかしこの日は先発で起用され2得点の活躍。「先発でも途中から出てもやることは一緒なので、どちらで出場しても構いません」と謙虚な姿勢を見せると、「これまで自分の特長はポストプレーでしたが、守備の裏への抜け出しも武器に加わりました」と1点目の奪い方を嬉しそうに振り返った。群馬県予選では健大高崎との準決勝、共愛学園との決勝でもいずれも先制点を奪ってチームを勢いに乗せた。

 2戦連発の高足はお家芸と言ってもいいこぼれ球からの先制ゴールを決めた。山本のクロスがゴール前で混戦となり、いち早く食い付いて打ったボールがネットを揺らした。「クロスが多くなる試合を予想していたので、こぼれ球を狙っていました」と勘働きの良さを自賛する。

 タイガー軍団がいよいよ地力を発揮してきた。新春2日、ベスト8進出を懸けた3回戦で同じく優勝候補の昌平とぶつかる。印象を聞かれた山田監督は「昌平はいいですね、上手です。やり合う試合展開になると思う。互いに主導権争いをするので、真っ向勝負が予想されます」と展望した。

 両チームは2021年度のプリンスリーグ関東で2度対戦し、2022年7月24日の第1戦は0-0で引き分け、同年10月3日の第2戦は前橋育英が3-0で快勝。最終順位は前橋育英が2位、昌平は5位だった。

 山田監督は「チームは違うがあの試合は参考になる。相手はスペースを狙ってドリブルで仕掛けてくるので、そういうボールを奪えるかがポイントになる。うちは3試合目、相手は2試合目。このビハインドは大きいですよ」と体力面を心配したが、1回戦から登場し休養日が1日だけの盛夏のインターハイを6試合勝ち抜いた自信は、伊達ではないだろう。

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河野 正

1960年生まれ、埼玉県出身。埼玉新聞運動部で日本リーグの三菱時代から浦和レッズを担当。2007年にフリーランスとなり、主に埼玉県内のサッカーを中心に取材。主な著書に『浦和レッズ赤き激闘の記憶』(河出書房新社)『山田暢久火の玉ボーイ』(ベースボール・マガジン社)『浦和レッズ不滅の名語録』(朝日新聞出版)などがある。

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