「昌平らしい戦いができた」 エース不発も難敵・近江に競り勝てた理由は?
近江の技術とプレスの早さに苦戦も、後半にゲームを支配
第101回全国高校サッカー選手権大会第3日は2022年12月31日、首都圏8会場で3回戦16試合が行われ、NACK5スタジアムの第1試合は優勝候補の一角、昌平(埼玉)が近江(滋賀)を3-1で破った。3回戦では今夏の全国高校総体(インターハイ)を制した前橋育英(群馬)と対戦。来季はプレミアリーグEASTを争う関東勢同士の屈指の好カードが実現した。
昌平は2年ぶり5度目の出場で、過去の最高成績は第98、99回大会のベスト8。今夏のインターでは4強入りした。MF荒井悠汰はFC東京、主将のDF津久井佳祐は鹿島アントラーズへの来季加入が内定しているほか、年代別の日本代表も多数擁する人材の宝庫だ。
しかし、前半の昌平はマイボールにしても、ドリブルとパスを自在に組み合わせた本来の質の高い攻撃を展開できなかった。荒井のサイドアタックもボランチを務めるMF長準喜のドリブル突破もほとんど封じられ、自慢の高いボール保持力を発揮できないでいた。むしろ近江のワンタッチでつなぐパスワークに苦戦し、敵の守備を切り裂いてからの決定的なシュートを打てなかった。
藤島崇之監督は「相手の技術の高さとプレスの速さに苦しめられた。攻守の切り替えの早さは分析して分かっていたが、実際に戦ってみるとそれ以上にすごかった」と脱帽と称賛の言葉で振り返った。
ハーフタイムには攻めの技術力を高めることを要求し、後半に臨んだそうだ。
この指示が効いた。12月11日にあったプレミアリーグのプレーオフ(参入戦)で2点目を決めたトップ下のMF大谷湊斗が後半2分、相手のクリアボールを拾い、バーに当たる豪快なシュート。10分にはボランチのMF土谷飛雅の右ロングパスを受けたMF篠田翼がわずかに右へ外れる一撃をお見舞いする。
そうして後半15分、右コーナーキック(CK)を近江がクリア、こぼれ球に素早く反応した篠田が豪快な左足シュートを決めて先制。6分後に右から左へと揺さぶられて失点したが、同34分には途中出場のFW伊藤風河が篠田のパスを中央で預かり、鋭く右足を振り抜くとゴール右に突き刺さって勝ち越した。さらにアディショルタイムに逆襲・速攻からダメ押しの3点目。伊藤が左サイドの篠田に長いパスを送ると、軽快なドルブルで運んでコースを狙った左足シュートを右隅に蹴り込んだ。
河野 正
1960年生まれ、埼玉県出身。埼玉新聞運動部で日本リーグの三菱時代から浦和レッズを担当。2007年にフリーランスとなり、主に埼玉県内のサッカーを中心に取材。主な著書に『浦和レッズ赤き激闘の記憶』(河出書房新社)『山田暢久火の玉ボーイ』(ベースボール・マガジン社)『浦和レッズ不滅の名語録』(朝日新聞出版)などがある。