「セットプレーはうちの強みです」 3分で2発逆転…四学香川西が“脅威の武器”発動、ここぞで光った伝家の宝刀
4年ぶりの選手権、1回戦で羽黒に3-2逆転勝ち
第101回全国高校サッカー選手権大会第2日は12月29日、首都圏8会場で1回戦の残り15試合が行われ、NACK5スタジアムの第2試合は、四学香川西(香川)が羽黒(山形)を3-2の逆転で下し、2回戦で今夏の全国高校総体(インターハイ)を制した優勝候補の前橋育英(群馬)と顔を合わせる。
前半の序盤戦は両チームとも長いボールを敵陣に放り込み、こぼれ球から展開する内容となった。四学香川西は自分たちが得意なはずのセットプレーから失点。前半4分という早い時間だった。左コーナーキック(CK)のこぼれ球をヘッドで押し込まれて早々に先制点を許した。
それでも焦りはなく、落ち着いていた。今夏のインターハイと前回大会代表の高松商に県予選準決勝で快勝し、4年ぶり12度目の代表権を獲得した自信があったからだ。
前半32分、MF菊池亜門が右サイドをドリブルで豪胆に運ぶと、右コーナーキック(CK)を得た。DF辻本海琉の蹴ったボールをDF福平太一がヘディングシュートを叩き込んで同点。この3分後には再び右CKを獲得すると、相手のクリアボールを拾ったDF小島大空が左足で決め、あっという間に勝ち越しに成功した。
大浦恭敬監督は立ち上がりの失点について、「4年ぶりの出場ですからね、選手は初出場と同じです。興奮してやらなくていい失点になってしまいました」と指摘する。
それでも練習を重ねてきたセットプレー2本で逆転するのだから、自分たちの武器を持っているのは大きな強みだ。
逆転ゴールを決めた小島は、「セットプレーはうちの強みです。僕の得点はたまたまですが、うまく入れることができて良かった」と控えめに喜んだ。指揮官は小島について守備面でも高い評価。「小島ともうひとりのセンターバック山西憂斗は2年生ですが、粘り強くなって諦めない守備ができるようになった」と褒めた。
後半18分にはMF山田晃市が右サイドから進出し、鋭いクロスを配給。GKが弾いたボールを見逃さなかったFW伊藤俊介が、確実に蹴り込んで決勝点を挙げた。「GKが弾いたり、ポストに当たることを予測していました」と笑顔を振りまき、「県予選準決勝でライバルの高松商に2-0で勝ったことも自信になっています」と説明した。
後半25分に1点を返され、試合終盤は羽黒の両サイドからのドリブル突破にピンチの連続だったが、何とか1点差で逃げ切った。
終盤に続いた危うい場面について大浦監督は「うちは2点くらい取ると次の1点を狙いにいかず、(ラインを)引いてしまうんですよ」と課題と修正点を挙げながらも、「香川県勢としてはまず1勝することがノルマ。達成できてほっとしています」と笑わせた。強豪の前橋育英との2回戦については「名前負けして引いてしまうのかな」と本音とは思えぬ言葉で締めくくった。
(河野 正 / Tadashi Kawano)
河野 正
1960年生まれ、埼玉県出身。埼玉新聞運動部で日本リーグの三菱時代から浦和レッズを担当。2007年にフリーランスとなり、主に埼玉県内のサッカーを中心に取材。主な著書に『浦和レッズ赤き激闘の記憶』(河出書房新社)『山田暢久火の玉ボーイ』(ベースボール・マガジン社)『浦和レッズ不滅の名語録』(朝日新聞出版)などがある。