「ベンチメンバーで得点しよう」 前橋育英、“ジョーカー”投入で決勝弾が生まれた舞台裏

後半37分に途中交代で入った山田皓生が押し込んで決勝点

 これが全国高校総体王者の強みであり、プレミアリーグで鍛え上げられた自信なのだろう。失点してから9分後、徳永の縦パスを小池がダイレクトで落とすと、高足が右足でゴール右隅に沈めて追い付いた。

 その後も後半21分に小池、同31分に青柳が勝ち越し機を外して1-1のままPK戦かと思われた同37分だ。

 複数のアタッカーを経由して左サイドを崩し、青柳のシュート性のクロスをGKが弾き、交代出場したばかりのMF山田皓生が押し込んで決勝点とした。

 指揮官は笑みを浮かべながら、「最後の最後で決定力に期待して山田を送り出しました」と満足そうにジョーカーを投入した理由を説明。起用に応えたヒーローは「先制された時、ベンチメンバーで得点しようと話していたんです。こぼれ球へ夢中で飛び込み、入った時は嬉しかった」と喜んだ。

 トーナメントの初戦というのは、どんなに強豪でも難しいものだ。前橋育英は2009年の全国高校総体で初優勝したが、全国高校選手権では初戦の2回戦で香川西(現・四国学院大香川西)に2-3で敗れた苦い思いがある。

「当時が頭をよぎったか?」と聞かれた山田監督は「全然思い出さなかった」と笑い、「インターハイの後はプレミアリーグで4連敗するなど勝てなくて苦しんだが、ここにきていい状態になった。苦しい状況でも逆転できるだけの強い気持ちが身に付いた」とイレブンの成長に目を細めた。

 次戦は13年前に苦杯をなめた四国学院大香川西との雪辱戦だ。

(河野 正 / Tadashi Kawano)



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河野 正

1960年生まれ、埼玉県出身。埼玉新聞運動部で日本リーグの三菱時代から浦和レッズを担当。2007年にフリーランスとなり、主に埼玉県内のサッカーを中心に取材。主な著書に『浦和レッズ赤き激闘の記憶』(河出書房新社)『山田暢久火の玉ボーイ』(ベースボール・マガジン社)『浦和レッズ不滅の名語録』(朝日新聞出版)などがある。

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