「ベンチメンバーで得点しよう」 前橋育英、“ジョーカー”投入で決勝弾が生まれた舞台裏
フリーキックから先制点を献上、山田監督「やられるとしたらリスタートだと思っていた」
第101回全国高校サッカー選手権大会第2日は12月29日、首都圏8会場で1回戦の残り15試合が行われ、NACK5スタジアムの第1試合には今夏の全国高校総体覇者で、5年ぶり2度目の優勝を目指す前橋育英(群馬)が登場。3年ぶりに出場した日章学園(宮崎)に2-1で逆転勝ちし、新春1月2日の2回戦で四国学院大香川西(香川)と対戦する。
今季、プリンスリーグ関東からプレミリーグEASTに昇格した前橋育英は、主将のMF徳永涼、MF根津元輝の両ボランチにFW小池直矢といった前回ベスト8のレギュラーが3人先発。序盤から高いボール保持力を発揮して主導権を握ったが、絶好の先制機に決定力を欠いてなかなかゴールを割れなかった。日章学園が多用したロングキックにも手を焼き、こぼれ球を拾えずリズミカルな攻めに移行できなかった。
ベテランの山田耕介監督も、「ロングボールのセカンドをほとんど拾われて大変だった」と振り返る。
前橋育英の得点機は前半5分、守備ラインの背後に抜け出したFW高足善がシュートしたが、GK小林俊雅の好守に阻まれ、同18分の根津の際どい中距離砲もわずかにクロスバーの上を越えていった。
前半26分には徳永の出色のチェンジサイドのパスを起点にMF青柳龍次郎がシュート。GKが弾いたこぼれ球をMF大久保帆人が打ったが、DFにブロックされ攻めながらも得点できない時間帯が続いた。
さらに前半36分には、日章学園のFW篠田星凪のロングシュートがバーに当たり、ゴールインぎりぎりの所に落下する冷や汗もかいた。
前半を0-0で折り返したが後半10分、右サイド23メートル付近のフリーキック(FK)をFW石﨑祥摩にヘディングシュートを決められた。山田監督は「やられるとしたらリスタートだと思っていた」と振り返る。攻勢に出ながら先制される典型的な悪い流れ。それでも徳永は、「初戦だし固くなるのは分かっていたが、それをマイナスに感じることはなかった」と前向きに戦っていたことを伝える。
河野 正
1960年生まれ、埼玉県出身。埼玉新聞運動部で日本リーグの三菱時代から浦和レッズを担当。2007年にフリーランスとなり、主に埼玉県内のサッカーを中心に取材。主な著書に『浦和レッズ赤き激闘の記憶』(河出書房新社)『山田暢久火の玉ボーイ』(ベースボール・マガジン社)『浦和レッズ不滅の名語録』(朝日新聞出版)などがある。