高校サッカー開幕戦で無念の敗退 津工、驚異の追い上げも指揮官が悔恨「ラスト20分のサッカーを…」

3点ビハインドから2点を返した津工業高校の選手たち【写真:徳原隆元】
3点ビハインドから2点を返した津工業高校の選手たち【写真:徳原隆元】

成立学園(東京B)に2-3で敗戦、3点ビハインドから追い詰めるも…

 第101回全国高校サッカー選手権は12月28日に国立競技場で開幕戦が行われ、津工(三重)は成立学園(東京B)に2-3で敗戦。3点ビハインドから追い詰めただけに、片野典和監督は「ラスト20分のサッカーをさせてあげたかった」と悔やんだ。

 津工にはいくつかの誤算もあった。まずは3年生の正GK田中蒼真が大会前に肺気胸の手術を行い離脱せざるを得なかったこと。もう1人の3年生GKは負傷により夏から長期離脱中で、このゲームはチーム内では第3GKで2年生の前川大和が務めた。しかし、この大舞台に「試合に入ったらボールが来るたびに怖いと感じ、相手のプレスも速く感じて焦って蹴ってしまった」と前川が話したように、普段ならうしろから丁寧につなぐビルドアップができなかった。ボールが前線に収まれば破壊力があっただけに、その過程としてロングボールからのセカンドボール勝負になってしまったため、本来の持ち味を削いでしまった。

 また、片野監督も3-4-2-1システムの両ワイドの選手に対し、成立学園の強力な両ウイングを意識させすぎたと話し「意識がうしろに引っ張られ、5バックになって相手のサイドバックへプレスに全く行けなくなってしまった」と、コーチングの部分を悔やんだ。その結果、押し込まれた状態からマイボールのスタートがロングボールになってしまい、枚数の足りない前線ではキープできない悪循環に。それでも前半35分まで0-0だったことから、指揮官は「5枚でも0-0で折り返せば、何とか耐えてハーフタイムに戻ってきてくれと思っているところから5分で2失点。全国の厳しさでした」と無念の思いを話した。

 ハーフタイム明けの後半にはサイドの選手に前向きの意識を植え付けて入ったものの、逆に警戒していたウイングのMF渡辺弦に決められて3点差に。しかし、ここからは吹っ切れたかのように少しずつ津工も攻撃を仕掛けた。うしろからの組み立てこそ叶わなかったが、背後のリスクを承知でのプレスでボールを奪う場面も増えて後半21分にMF増山万太が1点を返す。さらに同33分には攻撃参加したDF鳴川幸輝が追撃弾を決めて1点差に。そこからも同点を予期させるような場面はあったが、逃げ切りを許してしまった。

 この試合展開だっただけに片野監督は「前半からラスト20分のサッカーをさせてあげたかった」と後悔の念を話した。それでも、2点目をアシストした主将のFW庄司壮晴は、国立競技場での開幕戦を抽選で引き当てたことも含め「やり切ったので悔いはないです」と爽やかな言葉を残す。そして「(国立で試合をできて)嬉しかったし、不安はなかった。こんなに大勢の前(9931人)でプレーするのは初めてで楽しかった」と、笑顔で振り返った。

 途中出場も含め5人が出場した2年生には最終ラインで存在感を放った左利きのDF山本伊織らの楽しみな素材も多い。15大会ぶり3回目の出場となった津工だが、片野監督は「次が15年後とならないように、この経験を生かせるような形で次の代でも頑張りたい」と話した。全国の舞台で背負った3点ビハインドから、諦めない姿勢で見せた反撃は鋭いものだった。一歩及ばなかった悔しさと同時に自信も持ち帰ることになるはずだ。

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