森保監督に付きまとう“4つの不安” 続投への課題、解消できない後任適合者の不在

次世代の日本代表を担うであろう久保建英【写真:ロイター】
次世代の日本代表を担うであろう久保建英【写真:ロイター】

次世代との融合、スタッフ構成も不安要素

【3. 次の世代との融合を図れるか】
 カタールW杯に向けたチームが発足した時に、最初の命題として存在したのは世代交代だった。

 その点で森保監督が恵まれていたのは、東京五輪の監督を兼任することで「1チーム2カテゴリー」というグループを形成することができたこと。いざ五輪世代の選手が日本代表に合流した時にそれぞれの特徴がすでに十分把握できていたのだ。

 だが、同時に2カテゴリーを兼任したせいで、スケジュールが重なった時は五輪代表の試合を指揮することができないなどの無理が生じていたのも事実だ。

 次期監督がパリ五輪にどのような形で関わっていくかは不明だが、開催が予定されている2024年にはアジアカップが日程を変更して開催される可能性もあり、深く関わることはますます難しくなるだろう。

 そういう状況のなかで世代の違う選手を融合させていくのは、今回以上に難しい仕事になる。

 また、かつては五輪をきっかけに海外を目指していた日本選手だが、現在は五輪前に海外移籍を果たしており、より選手の観察・発掘は難しくなる。むしろ日本代表監督はヨーロッパに滞在していたほうがチームの構想作りは進むかもしれない。

 つまり、今回のカタールW杯と、次回のW杯に向けて必要とされるスキルは違ってくることになりそうだ。その点も考慮するべきだろう。

【4. スタッフの構成をどうするか】
 クロアチアにPK戦で敗れた翌日、森保監督は報道陣から続投の可能性を問われて「この仕事は私1人でやってるわけではない」としてスタッフの重要性を強調した。

 だが、すでに上野優作コーチがFC岐阜の監督に就任するなど、それぞれが監督として指揮してもおかしくない。今回のコーチ陣が解体されるのは必至だろう。

 合意形成しつつチーム運営してきた森保監督にとって、このスタッフとどれだけの意思疎通が図れるか、そして役割分担ができるかは、成果を出すうえで必要条件となる。実際に海外から監督を招聘する時は、そのスタッフも全員連れてくることが多い。

 今後集めるスタッフで森保監督が思う存分に力を発揮できるか、新しい化学反応はどういう効能をもたらすのか、不透明だと言えるだろう。

 もっとも、全体合意を得意とする森保監督にとってみれば、ここで新しいスタッフを追加することでこれまでのチームに変化と進歩をもたらすというプラスの一面が生まれる可能性もある。

森 雅史

もり・まさふみ/佐賀県出身。週刊専門誌を皮切りにサッカーを専門分野として数多くの雑誌・書籍に携わる。ロングスパンの丁寧な取材とインタビューを得意とし、取材対象も選手やチームスタッフにとどまらず幅広くカバー。2009年に本格的に独立し、11年には朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の平壌で開催された日本代表戦を取材した。「日本蹴球合同会社」の代表を務め、「みんなのごはん」「J論プレミアム」などで連載中。

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