【W杯】女性初参加の審判員・山下良美氏が実感した世界大会の難しさ 「より責任が重くなる」
初めてのW杯で6試合を“第4審”として経験
カタール・ワールドカップ(W杯)で、この国際大会の審判団に女性として初めて参加した山下良美審判員が12月15日、日本サッカー協会(JFA)のメディアブリーフィングに応じ、現地での独特な緊張感や雰囲気、改めて感じたサッカーの魅力を語った。
今大会6試合を“第4の審判員”として担当した山下審判員。グループF第2戦ベルギー代表対モロッコ代表(0-2)では、試合後にベルギーの守護神ティボー・クルトワが去り際にベンチの窓を拳で叩く姿が話題となった。このシーンについて当時の状況を山下審判員は「直接見てはいなかった。音で気づきました」と振り返っている。
「第4の審判員として、誰が何をしたのかを把握することを考えていました。近くにいたマッチコミッショナーとともに話し、審判報告書に記入をしました」
冷静な対応を取り、本人には特に声かけはしなかったという。また、グループH組最終戦のガーナ代表対ウルグアイ代表(0-2)の試合でも山下審判員が第4審を担当。後半アディショナルタイムの判定に不満を持ったウルグアイのFWエディンソン・カバーニがビデオ・アシスタント・レフェリー(VAR)のモニターを殴るなど判定で議論を呼んだこのゲームには「フィールドのすべてのことが見えるように心掛けた」と話し、試合後は審判団で何が起こったのかを入念に確認したと回顧した。
「どの試合も選手の顔、雰囲気、国を背負って戦う思いを感じていました。W杯ならではですね」と、この2つの場面に選手たちのリアルな姿を感じたようだ。
そのような経験を踏まえ、W杯のような大きな大会で「審判への厳しい声や批判」について問われた山下審判員は「W杯だけではなく、常にそういうものは感じていて責任があると思っています」と凛々しい表情で思いを吐露している。
「第4審もVARも、主審と同様の責任を感じています。W杯は見る人が特に多い大会で、より責任が重くなります。どの試合も同じように感じることですが、そういう批判が起こらないように予防、起こってしまっても対応するのが審判員だと思っています」
山下審判員は今大会を通し「自分のやるべきことをやったという大会でした。サッカーの凄さを感じ、改めて魅了されました」と率直な印象を述べつつ、今後について「大会参加できたことを誇りに思いますし、この先につながってほしいと思います。私自身もまた頑張っていきたい」とさらなる飛躍を誓っていた。
(FOOTBALL ZONE編集部)