【W杯】快挙の日本代表、検証すべきは「内容」と「質」 体制継続による8年間の停滞は致命傷に
現体制で技術委員会が代表監督のサポートに徹するなら、評価を下す機関新設が必要
ただし森保体制が継続された場合、4年先まで手腕を問われる機会はない。W杯は次回から参加国が48か国に膨れ上がり、アジア枠も実質倍増するので日本が出場権を失うリスクは皆無に近い。強いて挙げればアジアカップになるのだろうが、この大会で「これ以下なら失格」という明確なノルマが課されたことはない。
一方で代表監督の評価という点で、技術委員会が機能しているとは言い難い。そもそも最近は監督を任命した技術委員長が先に退任しているので、責任の所在が曖昧になっている。現体制で技術委員会が代表監督のサポートに徹するなら、逆に冷徹に評価を下す機関を新設する必要があるはずだ。
JFAは「2050年までに世界一」という目標を掲げたが、比較的新しい優勝経験国では、スペインが最初にベスト4入りしてから60年間、同じくフランスでも40年間をかけて世界一に到達している。もしここで同じ体制が8年間続いたことで停滞を招けば、大きな夢の実現には致命傷になる。国中が快哉を叫んでいる今こそ、JFAの本気度が問われる。
そして組織が成長していくには、必ず異論や刺激が必要だ。
(加部 究 / Kiwamu Kabe)
加部 究
かべ・きわむ/1958年生まれ。大学卒業後、スポーツ新聞社に勤めるが86年メキシコW杯を観戦するために3年で退社。その後フリーランスのスポーツライターに転身し、W杯は7回現地取材した。育成年代にも造詣が深く、多くの指導者と親交が深い。指導者、選手ら約150人にロングインタビューを実施。長男は元Jリーガーの加部未蘭。最近選手主体のボトムアップ方式で部活に取り組む堀越高校サッカー部のノンフィクション『毎日の部活が高校生活一番の宝物』(竹書房)を上梓。『日本サッカー戦記~青銅の時代から新世紀へ』『サッカー通訳戦記』『それでも「美談」になる高校サッカーの非常識』(いずれもカンゼン)、『大和魂のモダンサッカー』『サッカー移民』(ともに双葉社)、『祝祭』(小学館文庫)など著書多数。