【W杯】日本代表が取り組むべき最大の課題とは? 大事なのはポゼッションの「先」

日本の課題は保持ではなく、相手の守備を崩して得点へ持っていく能力を上げるか

 だから日本代表が取り組まなければならない課題は「ポゼッションを増やす」ことではない。保持の時間だけ増やしてもなんの解決にもならない。コスタリカ代表に敗れたのは保持が足りなかったのではなく、崩す手段が三笘薫ぐらいしかなかったからだ。最大の課題は相手の守備を崩して得点へ持っていく能力を上げることである。

 崩し方として一般的なのは「外」から殴る形だ。三笘のドリブル突破が典型だが、守備ブロックに引っかからないように外回りにボールを回し、大きなサイドチェンジも使いながら、サイドで1対1を作って突破してゴールへ迫る。

 もう1つ上級になると、「内」から崩す方法もある。わざと狭いところへ入って相手を圧縮させ、固まったことで生じるスペースを突く。ただし、その前提として圧縮が足りなければ一気に置き去りにできる推進力が必要だ。典型は準々決勝クロアチア代表戦でのネイマールの得点で、2つのパス交換でDFの間を突き破っている。アルゼンチン代表もリオネル・メッシにボールが渡った時だけこれがある。逆にスペインはいくら保持しても推進力がないので外へ逃げるか後ろへ下げていて、日本に追い詰められて失点した。

 繰り返すが、日本の課題は保持ではなく、その先にどういうアイデアを持てるかだ。立場は違うが、スペインも負けたのは保持のせいではない。利き足の右で蹴ってミスしたからといって、左で蹴るべきだったと言う人はいないだろう。両足使えたほうがいいけれども、問題はどちらの足で蹴るかではないわけだ。

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西部謙司

にしべ・けんじ/1962年生まれ、東京都出身。サッカー専門誌の編集記者を経て、2002年からフリーランスとして活動。1995年から98年までパリに在住し、欧州サッカーを中心に取材した。戦術分析に定評があり、『サッカー日本代表戦術アナライズ』(カンゼン)、『戦術リストランテ』(ソル・メディア)など著書多数。またJリーグでは長年ジェフユナイテッド千葉を追っており、ウェブマガジン『犬の生活SUPER』(https://www.targma.jp/nishibemag/)を配信している。

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