「中村俊輔さんみたいなFKが蹴りたくて」 J1王者守護神の“足元”を支えるGKのルーツ

足元の技術にも定評あるGK高丘陽平【写真:徳原隆元】
足元の技術にも定評あるGK高丘陽平【写真:徳原隆元】

【インタビュー】4歳年上の兄とのシュートの打ち合いっこがGKの“原点”

 2022年のJ1リーグは、横浜F・マリノスの3シーズンぶり5度目の優勝で幕を閉じた。その立役者の1人がリーグ戦全34試合フルタイム出場を果たし、自身初のベストイレブンにも選出されたGK高丘陽平だ。フィールドプレーヤー顔負けの足元の技術やキック精度を誇る守護神として注目を集めるが、そのルーツはどこにあるのか。そして、日本では人気がないポジションと言われることも多いGKというポジションの現状についても話を聞いた。(取材・文=石川遼/全3回の2回目)

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――今シーズンはリーグのベストイレブンにも名を連ねたましたが、GKを始めたきっかけは何かあったのですか?

「僕の記憶では、4つ上の兄と家の庭や公園でシュートの打ち合いっこみたいな感じで遊んでいる時にGKをやったのが最初。それが小学校低学年だと思います。そこから地元のクラブに入り、さらに小学3年生の秋頃にあざみ野FCというチームに入りました。最初はフィールドプレーヤーをやっていましたが、小学4年生の途中ぐらいですかね。ある試合でGKをやることになりました。土砂降りの雨でグラウンドはぐちゃぐちゃでしたけど、そんな中でシュートをかなり止めたんです。応援に来ていた親御さんたちが褒めてくれたりして、それで嬉しかったのはなんとなく覚えています」

――その時は自分からGKをやりたいと?

「どうですかね……。誰かに言われてやったのか、『自分でやります』と言ったのかはあまり覚えていないです。気づいたらGKのユニフォームを着てピッチに立っていた、という記憶です(笑)。あざみ野FCではサイドハーフとかフォワードをやることが多かったんですけど、その時からGKになりました」

――高丘選手と言えば、足元の技術やキックの正確さも注目されることが多いと思います。そのルーツがどこにあるのか気になっていました。

「GKを始めた頃はそういうところまでは意識していなかったと思います。でも、小学6年生で横浜FCのジュニアユースに入ることが決まり、それからの数か月の間はフィールドプレーヤーと同じ練習をやった記憶があります。当時から横浜FCの育成はGKがビルドアップに入ってボールをつなぐというのをやっていたので、それに合わせてあざみ野FCでも足元の練習を重点的にやりました」

――そうすると、その頃にはもうそこが自分の強みになるというふうには感じていましたか?

「そこまで考えてやっていなかったと思います。中学生になってからもビルドアップや足元が上手いという認識はなくて、高校生になってようやくですかね。周りの選手と比べて、そこが自分のストロングポイントになり得そうかなと思い始めたのは」

――ボールを扱う技術だけではなく、利き足とは逆の左足でも正確なキックが蹴れるというのも印象的です。

「小学校低学年、それこそサッカークラブに入る前から左利きの選手がカッコいいなって憧れがあったんです。だから公園で左足のキックも練習していました。その時は中村俊輔選手が日本代表でバリバリやっている時で、自分もあんなフリーキック(FK)が蹴りたいなっていうそんな理由だけだったと思いますけどね。もしかしたら僕のスタイルのルーツはそこにあるのかもしれないです」

――その中村選手にしても元アルゼンチン代表FWディエゴ・マラドーナに憧れて左足を練習したという話がありますし、高丘選手もそれが結果的に今の自分につながっている。

「今では自分を助けてくれる武器になっていると思います。キックに関して言えば、いろいろな球種を蹴れるように練習していて、低い弾道のキックも高いボールを蹴ることもしますけど、基本的にはF・マリノスがボールを保持するスタイルなので、人に目がけてピンポイントで蹴られるかどうかが重要な技術だと思っています」

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